Ernst Leitz Wetzlar|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2012.05.23 ]未分類

Ernst Leitz Wetzlar

ここ1ヶ月、睡眠時間が少なかった。わかっていたけど、無理をしていたら体にちょっとした異変があった。角を曲がったところにある井上医院に行ってきた。

井上和子先生は私が生まれてから今日までお世話になっている主治医である。ご夫婦で開業されていたが、30年ほど前にご主人を亡くされからは一人で続けて来られた。80歳をとうに超えておられるが、私の知る限り、定休日以外で休まれたことはない。

近所の空き地を駆け回って遊んだ子どもの頃、生傷が絶えなかった。今も残る3ヶ所の縫い傷は、どれも井上先生が縫って下さった。私の身体のことは誰よりわかって下さっている。

今日は症状を話すと、尿を取って来てくださいといわれた。診察室の流しの横に紙コップを置いて、元の丸椅子に座ったが、先生はそのまま流しのところに立って、試験管に尿を移し、検査を始められた。何もいわれないので、そのまま見ていた。試験管が遠心分離機にかけられて、ぶーんと音が立ち始めた。残った尿には細長い試験紙を漬けて見ておられる。そこで初めて振り返って、「待合室で待っていてください」と言われた。

10分ほどして呼ばれたので中に入ると、机の上で、この顕微鏡を覗いておられた。細菌が見つかったけど、薬を飲めば5日もすれば治りますといわれた。私は先生の説明を聞く間、初めて見る顕微鏡に目が釘付けだった。なんて美しい顕微鏡なんだろう。思わず、「私にも覗かせてください」と言った。

先生は、たいしたことがなくて安心したから、まぁ、いいでしょうと言われて、席を替わってくださった。真っ白な視界に細い線のようなものが動いている。それが細菌ですとおっしゃる。接眼レンズから目を上げて、ボディを見ると、Leitzという文字がある。ライカの前身の、エルンスト・ライツではないか!

写真を撮る許可を得たので、走ってカメラを取りに帰った。その間に、箱も出しておいてくださった。ご主人のお父さんがやはりお医者さんで、使われていたものらしい。大正時代のものだと言われた。80年以上、使い込まれている。いつまでも見ていると、「お祖父さんが喜んでらっしゃるわ」とおっしゃった。