末村祐子さんの岩手県大槌町の報告(その2)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2012.05.27 ]未分類

末村祐子さんの岩手県大槌町の報告(その2)

末村さんの報告を続けて再現する。

役場が機能停止に陥ったのは、経験豊富な指揮官を亡くしたからだけではない。行政改革の余波で職員の数が減っており、役場組織そのものが弱体化していたからだ。行政改革は、無駄な仕事の中身を減らすことであって、人を減らせばいいというものではない。

阪神淡路大震災で培われたシステムが東北で機能している。研修を受けた生活支援相談員と保健師が仮設住宅を巡回し、地域支援員が役場の職員の仕事をサポートする。それぞれが、縦糸と横糸になって、町を網羅して支えている。

役場が機能停止に陥ったときのバックアップ体制がひかれたのも阪神以降。姉妹都市に出向の動員がかかるが、送り出す側に、経験させたいという動機があるので、1週間交代で派遣されてくる。受け入れる側にとってこれは地獄だ。

阪神淡路大震災で得られた最も大きな成果は、市民議員立法により、1998年に成立した「被災者生活再建支援法」だ。この法律ができたから、被災した個人に「現金給付」が行われる仕組みができた。一方では東北のパチンコ店が繁盛している実態がある。関西人としては、先人の努力にも思いを到らせてほしいという思いがある。制度があるのは当たりまえではない。

現在取り組んでいる仕事は、①復興の財源確保、②役場の書類情報のクラウド化、③被災者支援。それと、阪神淡路大震災の体験で、さまざまなノウハウを蓄積できたことを踏まえ、ここで今起こっていることをファイル化する視点を持ち、次の備えとなるものをつくること。

大槌町では、支援を受ける時期から、そろそろ自分たちの足で立ち上がっていく、移行期にきていると感じる。必要な人には支援を継続すべきだが、支援する側には、行政であれ民間団体であれ、向かうべき方向性の確認が必要だ。 次回で終わり。