消費税が公共事業に化ける時|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2012.08.13 ]本・映画・演劇・美術・音楽

消費税が公共事業に化ける時

岩波書店『世界』9月号は読みごたえがあった。特に五十嵐敬喜氏の「消費税が公共工事に化ける時」には驚かされたので紹介する。

消費税増税を含む社会保障・税一体改革関連法案が可決・成立したが、またしてもそこに、民・自・公の三党合意で「附則」が忍び込ませてあったことをご存知だろうか。18条2項には「税制の抜本的な改革の実施等により、・・・成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、わが国の成長等に向け施策を検討する」という法文が追加されている。ここには消費税を大変質させる爆弾が込められている。

苦しい家計にあっても、増税を受け入れる覚悟をしている国民の大多数は、消費税の増税分を社会保障の財源にあてるというその一点を信じているからである。ところがこの附則はどう読もうと社会保障ではない。「公共事業」に「資金を重点的に配分する」ということである。これは詐欺行為だ。

五十嵐氏はそのバックグラウンドに6月4日に衆議院に議員立法で提出された「国土強靭化基本法」を指摘している。東北の大震災や首都直下型地震などをふまえ、国土を強靭化するために民間資金を含め10年間で200兆円規模の事業が必要であるという法案である。三党合意が6月15日であるから、200兆円の財源を求めて「附則」をひねり出したのではないかと書いている。8月10日に安住財務相は会見で「消費増税は、公共事業ばらまきには絶対使わせない」という予防線を張っているが、騙されてはいけない。

3.11を経て脱原発を目指す我々は「成長戦略」を求めていない。東北の人々は「強靭な国土-高い防波堤や高速道路などの巨大公共工事」を望んでいない。被災者が望んでいるのはかつての故郷を取り戻したいということである。

もう一つ、樫田秀樹氏の「疑問だらけのリニア新幹線-そもそも必要か?」も今、知るべきことが書かれていた。2045年に品川-新大阪を67分でつなぐJR東海の「リニア中央新幹線」は2年後に着工されようとしている。総工費は9兆300億円。レポートによると、超強力な電磁波で車体を10cm浮上させて時速500キロで地表を飛ぶので、新幹線の3倍以上の電力を消費するという。またリニア新幹線は南アルプスの糸魚川-静岡構造線や中央構造線などの巨大断層を横切っている。行程の8割がトンネルである。震災後、耐震性の議論はし尽くされていない。JR東海の現地住民説明会やパブリックコメントの対応を見ていると、原発の誘致と状況はまるで同じである。

消費税増税、国土強靭化法案、リニア新幹線、どれも原発の稼動とリンクしている。原発に依存しない社会の実現には、これら一つ一つと根気強く取り組まないといけないことに気づかされた。

その他、柄谷行人の「人がデモをする社会」もいい。「さよなら原発-17万人の記録」では大江健三郎、内橋克人ら全呼びかけ人のメッセージが全文、紹介されている。どうぞ書店で目を通してください。定価840円です。