第23回 地下発電所 「日本と中国」 (中)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2012.11.07 ]地下発電所

第23回 地下発電所 「日本と中国」 (中)

高杉さんは、東京大学で教育学を学んでいる。2人の息子には日本と中国の両方の教育を受けさせたいし、ネイティブの中国語も身につけてほしい。そこで、2003~06年の3年間、中国に戻って、1年生と4年生の子供を北京の普通の小学校に入れた。彼女自身は、保険会社に就職し、外資系企業向けの保険業務や、サポートセンターで海外旅行者対応の業務を行っていた。

泉原さんの解説による時代背景はこうである。

改革開放政策で、沿岸部に作られた経済特区に、外資が投入され、沿岸部は発展する。市場経済へ転換する動きが本格化したのは90年代に入ってからで、2001年にWTOに加盟する。高杉さんが滞在した3年間は、ちょうど経済の過渡期で、外資系の企業相手に、保険、弁護士などの通訳が求められていた時期である。

高杉さんは、中国の「一人っ子」政策に驚く。子供1人に6人の保護者がいる。過保護になった子供を「小皇帝」と呼ぶそうだ。「小皇帝」が学校へ上がると、保護者が競って送り迎えをする。登下校時の校門前は、両親や祖父母であふれかえる。高杉さんには信じられない光景だったとか。「小皇帝」と呼ばれ、甘やかされた子供が将来どうなるかは、目に見えている。儒教の敬老の精神を持たない彼らは、祖父母を施設に預けて見向きもしないらしい。

市場経済の導入で格差が開いた内陸部の農村では、跡継ぎの男の子が欲しいので、女の子が生まれても戸籍に入れず、男の子の誕生を待つ。女の子は戸籍が無いから教育を受けることができない。一人っ子政策は、棄民政策と言えるのではないだろうか。一方、都市部の富裕層は、子供をインターナショナルスクールや、小学1年生から「貴族学校」という全寮制の私学に入れる。教育格差は開くばかりだ。(続く)