[ 2013.02.07 ]森・里・海
続いて紹介したいのが、塙狼星(はなわ・ろうせい)さんから戴いた「半栽培の環境社会学-これからの人と自然」である。
塙さんは、現在、「空堀ことば塾」を主宰しているが、それまでは、研究者として、人類学の立場から中部アフリカの自然社会における人と自然の共生をテーマに研究をしてきた。この本では4章の「アフリカの里山」を執筆している。
環境保全という言葉を使うときに、頭に描く「自然」とはどういう自然だろうか。人間の手が加わらない原生的な自然をいうのだろうか?本書は、「手をつけないことによる保護」という発想を超え、人間と自然の多様な相互関係の歴史を踏まえながら、「今後、私たちは、どう自然とつながっていくのか」ということを論じている。
キーワードとなる「半栽培」という言葉は少し難しいが、「野生と栽培との間のさまざまなバリエーション」、または「人と自然のかかわりの多様性」という概念を表している。
全10章で、生態学、環境社会学、人類学、民俗学、林学など、異分野の9人の著者が、世界の「半栽培」の事例をひいて、多層的に人と自然の関係を論じている。興味深いのは、自然と人との関係が社会のしくみと結びついていることである。
社会のしくみとは、所有制度、ルール、権利などである。そのような事例を歴史的にたどることで、今後、私たちがどのように自然とかかわり、どういう社会的なしくみを作っていけばよいかを考えようというのである。
竹林、ヨシ、焼畑農業、きのこ、獣害など、どの事例も文章に著者の個性がよく表れていて面白い。小さなエピソードから連想が広がり、今、私たちがかかえている問題にリンクすることが多くて驚いた。