[ 2013.02.07 ]森・里・海
塙さんは4章の「アフリカの里山」で、コンゴの熱帯雨林の焼畑と半栽培について書かれている。このブログのために写真を送って下さったので紹介したい。
焼畑といえば、「焼く」ということに着目してしまいがちだが、「焼く」ことは主要な特徴ではなく、「畑の循環」に焦点をあてないと、本質がわからない。
その循環を簡単にまとめると、まず森の中で適切な土地を選び、伐開する。
伐開後、しばらく乾燥させてから、乾季の終わり頃に火入れを行う。刈り取られた木や草木が燃えると、作物を植えるスペースが生まれる。焦げた土は作物の生産性を向上させるのだそうだ。焼いた後、雨が降るのを待って作物を植える。2年半~3年経って、2度目の収穫が終わる頃、人々は畑を放棄し、次の土地を求めて移動をする。放棄された畑は約20年の歳月をかけて自然に元の植生に戻っていく。こうして20年の休閑サイクルで畑が循環されるのである。焼畑の本質は「森の循環」であると塙さんはいう。
ここで特徴的なのは、畑に日本のような畝はなく、プランテン(料理用のバナナ)、キャッサバ、タロイモなど根菜類を中心に46種類もの作物を植えることである。しかも種類ごとに植えるのを嫌って、意図的に分散して植える。これは「混作」と呼ばれる多様性がきわめて高い乱雑な畑である。
現地でのヒアリングではその理由として、「いろんなものが食べられるから」、「あるものは早く成長するが、あるものはゆっくり成長するから」、「プランテンがないときは、キャッサバやタロを食べられるように」という声を拾っている。生態学的にも雑草や害虫への耐性ができるなど、いくつかの効用が紹介されている。
さらに面白いのは、除草をしないことである。日本では「農業は雑草との闘いだ」と言われているが、その発想がない。周囲の森林から侵入する植物、放棄後に現れる植物。畑は多様な植物が混じり合う空間である。それらの雑草には名前がつけられ、船や太鼓、日常薬や呪薬など、それぞれに独自の用途を持っている。彼らは雑草もしっかりと認知して利用しているのである。
映画「モンサントの不自然な食べもの」を思い出す。遺伝子組み換えで、除草剤に対する抵抗力を備えた種を作り、除草剤とセットで売るモンサント社のビジネス。焼畑は効率だけを求める管理主義的な近代農法と対極にある。