水俣への旅 (その2)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2013.03.22 ]森・里・海

水俣への旅 (その2)

その日、居酒屋の棚に並べてあった本はこの6冊である。

W.H.Hudson  ”Far Away And Long Ago”1918
レイチェル・カーソン 「潮風の下で」1941
ローレン・アイズリー 「夜の国」1971
ポール・ブルックス 「生命の棲家」1972
コンラート・ローレンツ 「ハイイロガンの四季」1978
石牟礼道子 「苦海浄土」1969

友人が年賀状に書いた「ローレンツやカーソンの後を継ぐ者はいるのでしょうか」という質問に対して、百武さんは、「後を継ぐと言えるような人は知らないし、多分いないのではないかと思うけれど、部分的には、ネイチャーライティングに数えられる作品の中から、幾つか選ぶことはできるかもしれません」ということで、「これは読んだ?」「この人は知ってる?」というメールのやりとりがあって、「ではお貸ししましょうか」ということになったらしい。

私が読んでいたのは、『苦海浄土』だけだった。百武さんは、「水俣は今もまだ終わっていない問題です。石牟礼さんは、カーソンの提起した問題ともつながっているということで挙げました。私の感覚の中では、「後を継ぐ人」というのとは、関係はあっても少し違う線の上にいます。カーソンは、『サイレント・スプリング』ではなく、カーソンの本の編集者が彼女とやりとりした手紙などをまとめた『生命の棲処』を選びました。その方がカーソンの人となりを理解しやすいと考えたからです」とおっしゃった。

ネイチャーライティングという文学のジャンルがあることを知らなかった。自然と人間のかかわりを考察するノンフィクションを指すらしい。「文学・環境学会」が編んだ『楽しく読めるネイチャーライティング』(ミネルヴァ書房;2000年)を教えてもらった。120冊を集めたガイドブックである。さっそく古書で購入した。編集がしっかりしていて、楽しい本である。

その夜の友人へのレクチャーのために、百武さんはオリジナルの年表まで作成されていた。蒸気機関の発明から始まる世界の出来事と重ねて、自然環境に関する書物と著者の生きた時代が示されている。年賀状のたった一言の添え書きに、これほどきめ細かい対応をして下さるなんて。彼女は幸せ者だ。

初めてお会いしたのに、話がはずんであっという間に2時間が過ぎた。鳥や昆虫の話から、自ずと公害や環境保全の話になった。私の中で、ヒロシマ-水俣-福島というラインが強く浮かび上がってきた。