[ 2013.12.13 ]トーチカのイベント
ここに並んでいるのは、同じ町内の平田栄三郎さん(89歳)が、世界中を旅して集めてこられた民芸である。民芸とは、民衆的工芸の略で、日々の暮らしの必要から生まれた手仕事のことをいう。
平田さんが民芸に目覚めたのは、戦後の何も無い時代に、月刊誌「民芸」を読んだのがきっかけだった。中でも陶器の美しさに魅かれて、全国各地の窯元を訪ねるようになる。民芸好きが人の目にとまり、昭和40年頃、通産省が行っていた世界の民芸事情の調査に参加。約5年間、世界各地の民芸館、手仕事場、美術館を廻るうちに、すっかり民芸の虜になってしまったという。
先月、これまでの50年を振り返り、心に残る民芸品や、バーナード・リーチや濱田庄司との出会いなどを、当時詠んだ短歌と一緒に、一冊の本にまとめられた。タイトルは『モナリザに逢う』。写真はすべてご自身の撮影で、民芸の貴重な資料である。
自分はもう十分手元に置いて楽しんだから、次の人に手渡したいと言われて、破格の安さでの提供である。「町内の皆さんに喜んでもらいたいから、タダでもいいけど、タダにすると粗末にされるので、一応、値段をつけました」という程度である。
買ってくださった方には、くじ引きでもれなく当たるプレゼントを用意してくださった。どなたも、買われたものよりいい品物を当てて、「いいのかしら」と恐縮しながらも、喜んで持って帰られた。平田さんはずっと、嬉しそうだった。
町内の皆さんをはじめ、いろんな人が来られて、お茶を飲み、民芸を手に取りながら話をして、帰っていかれた。二日目の夕方、平田さんはさすがに少し疲れられて、 「今年が最後かな」とおっしゃった。
平田さん、お疲れさまでした。また来年、もう少しいい気候の頃にやりましょう。 ありがとうございました。楽しかったです。