福島レポート2014年(その1)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2014.02.11 ]原発・福島・東北

福島レポート2014年(その1)

金曜日の夜行バスで福島に行ってきた。明け方、遮光カーテンをそっとめくって、曇った窓ガラスを指の先でこすると、真っ白な雪の世界があらわれた。まだ人々が眠っている町に、雪が静かに降り積もっている。

深夜の高速バスはいい。3列シートの窓際のシートに座って、通路側のカーテンを閉じると、プライバシーは確保できる。遮光カーテンはぴったり閉じられているので、対向車のライトも通さない。消灯になると真っ暗になる。車内は会話もなく無音。低いエンジン音に、すれ違う車のシューッというタイヤの音が一定間隔で重なるだけ。読書灯を点けると、ひっそりと一人になれる。飛行機のエコノミーでは味わえない、この孤独な疾走感が好きだ。

震災後、福島を訪れるのは、これで7回目になる。原発の事故がきっかけだったが、事務所で忙しい日々を送っているときに、ふと、福島のなだらかな山並みや、阿武隈川の土手の風景を思い浮かべると、「行きたいな・・」と思うようになった。福島の町が好きになってきたのだと思う。被災した福島のために、何ができるわけでもない。でも、美しい自然に囲まれた福島を一旅行者として訪れる。それだけでもいいと思えてきた。

知事選があった東京は大雪で大混乱だったらしいが、福島の町は静かだった。道路は除雪車で整備され、みんなが家の前の道を、人が歩けるように雪かきをしている。歩いていると、「こんにちは」と声がかかる。写真を撮っていると、いかにも観光客に見えるのだろう、「綺麗ですか?」と、笑顔で言われた。上の写真は市内中心部。

そしてこれはお土産の「あんぽ柿」。昨年の12月、大阪のFMラジオで、「震災後、3年ぶりの出荷」というニュースを聞いて、ずっと食べたいと思っていた。福島では朝刊1面のトップ記事だったと聞く。製造は伊達市で、干し柿なのに鮮やかな柿色を留めているのが特徴だ。パクッとかぶると、柔らかく、半生で乾燥させているので、とろりと甘い果肉が口に広がる。がんばれ、福島!という気持ちでかみ締める。

放射線のことは、いろんな情報があり、様々な意見がある。この3年間、講演会に参加し、本や論文を読み、インターネットで検索もしたが、知識として頭に入るだけで、自分のものにならなかった。でも福島の訪問を重ね、今回、大阪に帰る深夜バスの中で、ようやく自分の考えを、人の言葉を借りずに書けそうな気がしてきた。福島が遠い見知らぬ町でなく、心親しい町に変わってきたからだと思う。