ベトナム社会主義共和国のこと(その2)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2015.03.08 ]地下発電所

ベトナム社会主義共和国のこと (その2)

もう一つ不思議に思ったのは、鋼材を中国から輸入したことだ。ベトナムの粗鋼の生産量は500万トンを越えたというが、空港建設相当量の製品を出せる製鉄所がないということだろうか。それとも別の理由があるのだろうか。ものづくりの基幹となる鉄鋼産業がまだ確立されてないとすると、ドイモイから30年経っているというのに遅い感じがする。しかし、製鉄所ができて、先進国の経済発展の歴史をなぞることが豊かさではないので、それも一概に悪いことではないかもしれない。

先進国の経済発展の歴史をなぞるということでいえば、負の側面である環境汚染が深刻である。スライドで見せてもらったロマンチックな霧の中の風景は、霧ではなくPM2.5による大気汚染であった。バイクで埋め尽くされた道路も排気ガスが充満している。

希望が見える話をしよう。ベトナムは若い国だ。人口ピラミッドを見せてもらったが、20代が最も多い。日本とは40年の差があると言われている。稲垣和江さんは現地の夫を訪ねて行くたびに、近所のおばさんから「ベビーはまだか?」と言われたそうである。

小松さんによるハノイの街の紹介では、ベトナムの風物詩のような曲芸バイク、たとえば鳥かごや果物を山のように積んだバイクや、家族4人乗りバイク、道端で天秤かごを置いて水菓子などを売る女性や、カフェにたむろしてお茶を飲んだり、道端で煙草を吸ってしゃがんでいる男たちの写真を見せてもらった。食事の写真はどれもおいしそうだった。

ベトナムの女性が働き者だという話はよく聞く。下の写真は2008年のホーチンミンで撮った。社会主義の国なので、性別に関係なく女性もよく働くという意味かと思ったが、男性がそんなに働かないということだと聞いて、へ~っとなる。そういえば、昼間のカフェは男の人ばかり。どうしてかな。

働く女性は子供をどうしているのかという質問が出た。家族の年寄りが見ているということだったが、それができない人は保育所に預けるらしい。保育所はたくさんあるけど、安いところは道沿いの1階にあって、排気ガスが立ち込めているので、ほんとは預けたくないということだった。

「社会主義の国にいると感じるときは?」という質問には、稲垣元宣さんが、日常ではほとんど感じないけど、老後の福祉施策が充実していると聞いていると答えた。私が訪れた2008年も社会主義を意識することはなかった。

福祉施策で思い出したが、ベトナム戦争で米軍が撒いた枯葉剤による障害者や、激しい戦闘による精神障害者に対する支援はどうなっているのだろう。実態は調べてみないとわからない。和江さんに聞いてみると、メコン川ツアーのベトナム人日本語ガイドさんの話では、枯葉剤の影響による障害が循環器系など目に見えないところに現れることがあり、農家でそういう子どもが生まれると、医療費が生涯かかるので貧しさから抜け出せないという。また、TVで知ったことだけどという前置きで、難聴の子供が日本の10倍ぐらいいて、それも枯葉剤による遺伝子操作らしいと教えてくれた。ベトナムの補聴器の性能が良くないので、日本製の補聴器を買いたいが、給料の半年分くらいの価格なんだそうだ。http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20150224.html