ベトナム社会主義共和国のこと (終わり)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2015.03.08 ]地下発電所

ベトナム社会主義共和国のこと (終わり)

ベトナムは農業国である。計画経済の間は、作物の種類や米の作付け量などは政府が決定していたが、自由経済への転換で、できる農家は二毛作、三毛作と生産量を増やして大きくなり、都市部だけでなく農村にも格差が広がっているらしい。2007年のWTO加盟で政府は農村への補助金を打ち切り、外国の農作物の輸入にかけていた関税が引き下げられた。農村はこれからどうなるのだろう。

和江さんは、お年寄りから、1970年頃の昔はよかったという話を聞いて驚いたという。ベトナム戦争の最中である。今のWin-Winのマネーゲームのような社会になって、人を信用できなくなってきたからというのだ。昔はみんなが貧しく苦しかったけれど人間らしかったということなのだろうか。

ベトナムは若い国である。外国の援助を受けて急成長するこの国は、アジアの中でどのような国づくりを目指すことが国民の幸福に繋がるのだろう?そんなことを集会の後、考えていた。経済の成長はゆっくりと共産体制を崩して民主化が推進されるのだろうか。

坪井善明は著書「ヴェトナム新時代-豊かさへの模索」(岩波新書)で、次の2点を挙げている。一つ目はホーチンミンが臨んだ「共和国」という新しい人間のあり方をアジアという空間でかつ21世紀という時代の中で提示すること。二つ目は小田実が死ぬまで希望を託した「平和と反戦」の価値の尊さを身をもって地域と世界に示すこと。「民主共和制と反戦平和の価値の双方を体現する存在として地域で輝くこと、そこにヴェトナムの存在理由があり、明るい未来がある」と書いている。

上の二つ目については、日本がアジアの中でそのような存在になるはずだったが、日本は絶望的な状態になってきた。ベトナムの夢のような国づくりのイメージを頭の中に描きながらそんなことを思った。

空港の建設を通してこの国のことを考える機会が与えられたこと、ゲストの稲垣さんと小松さんには感謝している。地下発電所はゆっくりと続けて行こうとあたらめて思った。

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