ウクライナとロシアで起こっていること|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2022.03.01 ]憲法・平和

ウクライナとロシアで起こっていること

ウクライナの地図

領土拡大という侵略戦争は、プーチンというたった一人の狂信的な指導者によって始められた。ロシア軍による軍事侵攻が始まった25日の夜、ウクライナのゼレンスキー大統領は4名の閣僚とキエフの街角に立ち、自撮りの動画で国民に語りかけ、逃亡せずに留まる意思を示し、連帯を呼びかけて徹底抗戦を宣言した。そして軍の最高司令官として、18才から60才までの予備役の招集を命令した。

「予備役」という言葉がリアルな想像を呼び起こした。明日も続くはずの家族や仲間との日常が突然打ち切られ、戦場に行く者と見送る者に分断される。それはウクライナとロシアの両国で起こっている。戦場は人が人を殺すところである。生まれながらに人を殺すことができる人間はいないはずだ。その戦争に大義があっても、なくても、戦争を経験した人の心の傷は想像できないほど深いと思う。愛する人を見送る人たちの悲しみや心の痛みは、どこの国も同じだ。これ以上多くの分断が生まれないように、一刻も早い終戦を願う。

BBC日本版には、ウクライナに侵攻したロシア軍に降伏するのを拒み、ロシア軍を罵倒した後に砲撃されて死亡したウクライナの国境警備隊13人に25日、英雄の称号が与えられたという記事があった。ウクライナ政府は、投降を呼びかけるロシア兵の声、ウクライナの国境警備隊が「もうだめだ」と話す様子や、最後に放った「地獄に落ちろ」という音声記録を公開している。その声に耳をすませた。日々報じられる死者数を見て、こうして途絶えたひとつひとつの命を思う。

ゼレンスキー大統領は動画を日々更新し、軍や国民を勇気づけるメッセージを発信している。44才というその若さに驚く。彼もまた突然、戦場の指揮官となった。日を追うごとに顔に精悍さが増している。26日の朝には再び街角に立ち、あらためて国外逃亡のデマを否定し、「私はここにいる。武器を捨ててはいない。国を守り続ける。われわれの土地、国を守る。ウクライナに栄光あれ」と語った。動画は30秒ほどだったが、ロシア軍がウクライナで殺害しようとしている標的のトップが、地上に出て、命を危険にさらして国民に語りかけている。命を懸けた言葉は、字幕を追いながら聞く日本人の私でさえ胸を突かれた。

一方、ロシアの国内では反戦デモが広がっている。28日の朝までに5,900人以上の人々が拘束されている。この戦争には大義がないという世論の広がりを恐れるプーチンはさらに弾圧を強めるだろう。摘発を恐れず、命をかけて抗議するロシアの人々の勇気を讃える。恐怖政治を敷く独裁者を倒すのがどれだけ難しいかも私たちは知っている。しかし戦争終結への一縷の望みをロシア国内に起こり始めた抵抗のうねりに繋ぎたい。

私にできることは祈ることだ。死と隣りあわせで戦うすべての人たちに魂の救いがもたらされますように。大きな苦しみや悲しみの中に置かれている人々に、神様からの慰めと励ましによって、心に平安がもたらされますように。

そして祈りつつ、神様のみ心にかなうことをしよう。それは隣人を愛することだ。自分が今いる小さな社会の中で、せめて争いを作らず、互いに助け合って生きていこう。その一人ずつの努力の先に、今よりもよい世界が広がると信じている。