結婚式ができるまで(その16)先輩たち|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2021.05.08 ]結婚式ができるまで

結婚式ができるまで(その16)先輩たち

左:菅家克子さん 右:谷口美樹子さん

1970年代の大阪にアトリエ・トリフォイルという女性建築家3人が運営する建築設計事務所があった。学生時代にはあこがれの存在であり、私の同級生が就職し、独立したように、たくさんの女性の建築家を輩出している。その創始者のひとりが菅家克子さんで、谷口美樹子さんはアトリエ・トリフォイルの卒業生の一人である。お二人とは20年以上にわたって一緒に仕事をさせていただいている。

今から15年前、仕事で青木に出会い、恋に落ちた。東京在住の彼は、妻を病気で亡くし、3人の子供がいた。プロジェクトが終われば、もう会うこともない。その頃、菅家さんとも仕事をしていた。ある日、天満橋の事務所で打ち合わせをした後、近くのトンカツ屋さんのカウンターでランチを食べていた。好きな人がいるという話をすると、「手紙を書いたら?」と言われ、プロジェクトが終わったときに、ペリカンの万年筆で手紙を書いた。それが、始まりだった。

谷口美樹子さん

谷口さんは私の高校の先輩である。習っていた先生が一緒だったりして、よくいろんな話をしていた。青木と東京-大阪で不定期に会い始めた頃、谷口さんと現場の帰り、そんな話をしたら、「結婚式には、私、ピアノ弾きますよ」とおっしゃった。ハハハとその時は笑ったが、15年後、ほんとうに結婚することになり、ピアノを谷口さんにお願いした。谷口さんはとても喜んでくださった。ただ、教会で挙げるなら式の奏楽は教会の奏楽者にお願いする方がいいとおっしゃって、パーティで弾いてくださることになった。

おおらかで面白い方なのだが、ものすごくまじめである。選曲をピアノの先生と相談して、吟味して2曲選んでくださった。それでも、2曲は長いから、1曲の方がいいかと迷われていたので、私が2曲とも弾いてほしいとお願いした。バッハの『G線上のアリア』とプッチーニの歌劇『トゥーランロッド』の中のアリア『誰も寝てはならぬ』だった。静まりかえったホールでピアノの前に立った谷口さんは、「注目されると緊張するから、どうぞご歓談のまま、気楽に聴いてください」とにっこり笑って、座るといきなり弾き始められた。カメラを持った菅家さんが、なんとか私と谷口さんが一緒に収まるように苦心しながら、位置を変えて写真を撮ってくださる。心のこもったピアノの音と、弾むように移動する菅家さんの笑顔が重なって、私はずっと微笑んでいた。