結婚式ができるまで(その15)教会の人々|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2021.05.05 ]結婚式ができるまで

結婚式ができるまで(その15)教会の人々

平野嘉春牧師

結婚式を執り行う司式は、平野嘉春牧師にお願いした。定年を過ぎて六甲アイランドの教会に移られたので、結婚までの聖書の学びは現在の北大阪ルーテル教会の水野賢太牧師に教わっていたが、結婚式はどうしても平野牧師にお願いしたかった。水野先生は式の後のパーティで最初に祝辞を述べて下さった。

水野賢太牧師

東日本大震災で原発事故が発生し、青木はその事故処理のために私に一方的に別れを告げて福島に行ってしまった。事故直後は日本がどうなるかわからないという状況だったので、彼は死を覚悟しての別れだった。平野牧師は、当時の私を、彼と再会するまでの数年間、夫人の和代さんと共に、親身になっていつも支えて下さった。私たちクリスチャンはすべての事象を神の計画だと考えるが、苦難に立たされると、そこにどんな神の意志があるのかを疑ってしまう。平野牧師は聖書から、このイエスの言葉を示してくださった。「私のしていることは、今あなたにはわからないが、後で、わかるようになる」(ヨハネによる福音書13章7節)

結婚した今、その意味がよくわかる。もしあの大きな試練を乗り越えることができなかったら、私たちはもっと些細なことで喧嘩をして、別れていたかもしれないからだ。

 

教会のみなさん

私たちの教会には「マルタ会」という婦人会がある。マルタは聖書の中に登場する働き者の女性の名前である。教会で提供する食事はマルタ会の役割だ。50人分ぐらいのカレーやちらし寿司なら、手分けして下ごしらえしてきた具材を持ち寄り、礼拝前の小一時間で調理してしまう。頼もしい家事のプロ集団だ。そして私たちはよく一緒に讃美歌を歌って祈る。礼拝のあと、輪になって座って、隣あう者どうしで二人か三人ずつ、お互いに、祈ってほしいことを伝えあって、一緒に目を閉じ、相手の祈祷課題を声に出して祈るのだ。信仰の友に祈ってもらうのは、ほんとうに励まされる。青木が福島に行った喪失感を、どれだけこのマルタ会の祈りで埋めてもらえたことか。

結婚式にはマルタ会のほとんどのご婦人が出席してくださった。パーティで出すサンドイッチやケーキは、事務所のスタッフが準備する手はずにしていたが、逆にお客さんの皆さんが指揮して、いつものように手早くセッティングしてくださった。式の中で、マルタ会の方々が歌う讃美歌の声は、祝福の祈りがこめられ、いつもより温かく、力強く、美しく会場を包んだ。