長らくのご無沙汰でした|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2021.05.04 ]本・映画・演劇・美術・音楽

長らくのご無沙汰でした

最後の更新からあっという間に1年が過ぎてしまいました。その間に世界はコロナで一変しました。ご無沙汰しているみなさまには、「お元気ですか?」のいつものご挨拶にも、万感の思いがこもります。どうかご無事でいてくださいますように。

この連休は青木が暮らす福島に来ています。今は月に1度、彼が大阪に会いに来てくれますが、来年の4月には大阪に引っ越して来る予定です。でも仕事が終わらずまた延びるかもしれません。今朝は阿武隈川の土手を散歩しました。遠くに見える安達太良山にはうっすらと雪が残り、5月といえど、菜の花やたんぽぽ、あざみが咲く土手は初夏というより、まだ春の彩りです。こういう自然が身近にある暮らしが一方であるというのは、手放すとなればさみしい気がして、昨夜の雨で少し流れが速くなった川を眺めていました。

大阪では92歳の父と二人暮らしです。歩いて10分ほどのところにある小規模多機能型のホームで、週に3泊ほどショートステイのサービスを利用しています。出張や仕事で家を離れる予定は、そこに集中させています。父は失明し、家の中でも車椅子生活になったので、いわゆる介護問題のただ中にいながら仕事をするのは、苦労がありますが、これも後になって振り返れば、必要なことだったと思えると信じて、なんとかがんばっています。

ノマドランドのフランシス・マクド―マンド

昨日は福島の小さな映画館で『ノマドランド』を見てきました。もしコロナ禍で迷っておられたら、マスクを2重にしてでも劇場の大きなスクリーンで観てください。主演のフランシス・マクドーマンドの演技は彼女のキャリア史上、最強ではないかと思います。『ファーゴ』を観て以来、大好きな役者ですが、3年前にアカデミー賞の受賞のスピーチを聞いて、人としても、とても好きになりました。「ノマド」とは放牧民のこと。夫を亡くした主人公が家財道具一式をバンに積み込んで、季節労働者として働きながら、移動生活をするロードムービーです。アメリカ中西部の広大な自然、その中で出会う人々との交流が描かれています。

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アパートに戻って、二人でバーボンを飲みながら、青木は自分も一種のノマドだと言う。この小さなアパートには家具がない。テーブルも机も物入れも全部段ボールの手作り。いつでも片付ければ、トランク一つで移動できるコンセプトで暮らしてきたからだ。東京を捨てて福島に移住して9年、そして大阪へ。

映画を観て予期せず心に残ったのは、「死者と生きる」ということだと話した。自分たちの年齢が、「別れ」ということに敏感にさせていた。近づく父との別れ、そしていつか来るパートナーとの別れ。コロナ禍の環境がさらにそういう思いを強める。しかしできることは、明日を憂うことなく、一日一日を丁寧に生きること。福島の自然に癒され、大阪に戻ったらまたがんばって仕事をしよう。映画の中で、どうして年金をもらわないのかと尋ねられた主人公が言った。“I like work.” 同感。私も仕事が好きだ。

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ブログは結婚式の報告が未完で終わっています。これが済まないと、いつまでも今のことが書けないので連載を再開し、早く現在に戻ろうと思います。