結婚式ができるまで(その9)ブーケ|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2020.02.14 ]結婚式ができるまで

結婚式ができるまで(その9)ブーケ

 

 

バージンロードのサイドの椅子に花をセットする浅野千鶴さん 撮影:NOG

「ブーケは私が作る」と言ってくれた浅野千鶴さんに、バージンロードの両サイド、祭壇、テーブルなど、会場に飾る全てのお花のアレンジをお願いした。

私は彼女を旧姓で「藤岡さん」と呼んでいる。藤岡さんは病院で臨床検査技師として働いている。夫の両親と同居して、働きながら子供2人を育ててきたが、やっと自分の時間を作ることができるようになって、8年前から休日にフラワーアレンジメントを習っている。数年前に自分の姪の結婚式に作ったブーケが評判になって、口コミでブーケやコサージュを頼まれるようになってきた。

それを聞いた私は、「ブランド名をつけて名刺を作ったら宣伝するよ」とけしかけて、二人で「primavera(プリマヴェーラ・春)」という名前を考えた。

撮影:NOG

藤岡さんとは小学校4年生のときに同じクラスだった。その頃、大阪市では、にわかに越境入学が問題になって、彼女は5年生になるときに本来の校区の小学校に転校したから、一緒にいたのは1年しかない。その1年間、私たちはほぼ毎日、一緒に過ごした。小学校と藤岡さんの家の中間に私の家があったから、藤岡さんはいつも私の家でランドセルを置いて、暗くなるまで遊んだ。帰りは祖父と一緒に家まで送っていった。お互いの家に泊まる日は、布団の中で遅くまで喋った。

私たちが4年生だった1969年は、東大安田講堂事件、フォークブーム、水俣訴訟、アポロ11号月面着陸、ウッドストックフェスティバル開催、シャロンテート殺人事件、ブライアン・ジョーンズ死去、ホー・チ・ミン死去。そんな年だ。

担任は国語が専門の滝本巌(たきもと きよし)先生だった。毎日、小さな紙を配られて、私たちはそのとき思ったこと、感じたことを詩にした。それを先生はガリ版刷りで「たけのこ」という詩集にして週に1度ぐらいの割合で発行したのだった。1ヶ月に1度はお楽しみ会というのがあって、やりたい人は前に出て歌ったり、お話をした。天気がいい日は授業をせずに、キックベースボールをすることもあったが、不思議なほど楽しくて夢中になり、晴れた日は「先生、やろう」とみんなでねだった。

「私たちの精神のベースは、4年生でできた。これは確信できるね」と藤岡さんとよく話す。いろんなことがあって大人になった。あれからちょうど50年。結婚する私を、花に新たな生き甲斐を見出した友が、その花で祝福してくれる。

ブーケとコサージュ 撮影:NGO

ブーケには二人が好きだった水色の小さな花を。髪につけるコサージュは顔が明るく見えるようにクラシックローズを。バージンロードは清潔な白とグリーン。それを茶話会のテーブルに飾るときは、シックなレッドを混ぜて。祭壇はナチュラルなグリーンをベースに少し華やぎも加えて。

昨年、結婚すると報告したら、藤岡さんはすぐに飛んできて、「式はどんな風にするの?」と聞くから「まだ何も考えてない」というと、「ボタニカルウエディングは?」と言った。一瞬でコンセプトが決まり、ウェディングドレスはナチュラルなエンパイア型にと、どんどん決めることができた。

青木に「どう思う?」と電話すると、1969年に17才だった彼は、「白の木綿のドレスにシロツメクサの花冠をつけるイメージがいい」というので、ボタニカルな感じは共有できてると理解した。それより藤岡さんの夫が飼っている伝書鳩に興味津々だった。昔、伝書鳩のレースを主題にした漫画があって、あの世代は伝書鳩への憧れがあるらしい。

と、話しは尽きないが、ここでおしまいにして、次は珈琲の話に続く。

 

藤岡さんが出品する花展のお知らせ
【ターシャに恋して】
日程:2月23日(日)~26日(水) 
 場所:スタジオグレース
大阪府大阪市福島区福島6-6-3

http://www.studiograce.com/katen/katen_2020.html