結婚式ができるまで(その8)十字架|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2020.02.13 ]結婚式ができるまで

結婚式ができるまで(その8)十字架

結婚式の開場を待つ十字架と花を飾る浅野千鶴さん 撮影:NOG

キリスト教式の結婚式になくてはならないのが十字架である。私の教会にならって、木の角材で作ろうと思ったが、角材をホームセンターで買うのは味気ない。ちょうどその頃、木造の現場が3つ動いていた。京都の数寄屋、大阪の豊崎長屋、岡山のCLTのオフィスで、どれも長丁場の現場だ。そこから端材をわけてもらおうと考えた。

角材と決め込んでいたが、ある日、京都の山本興業の加工場で、北山スギの面皮柱の加工で落とした端材を、大工さんが図面を押さえる文鎮がわりに使っているのを見て、これだ!と思った。北山スギの丸太をさっと四面落とすと、角が丸い柱ができる。数寄屋ではそれを面皮柱と呼んでいる。

面皮の端材をいただけませんかと、お願いすると、およその寸法を聞いた穂園棟梁が綺麗な丸太から形の整った2本を用意して下さった。端材といえない立派な木で、カンナをあてた板目を2枚あわせると、吸い付くようにくっついた。小雨が降っていたので、それをサランラップときれいな木綿の白い布で丁寧に巻いて下さった。私はゴルゴダの丘に向かうキリスト、イエスのように、それを肩に担いで京阪電車で持って帰った。

昨今、木造を取り巻く世界でトレーサビリティという言葉を聞くが、材料の素性がわかっている、知っている人から分けてもらうということから生まれる安心感、愛着はこういうことなんだとわかった。

祭壇に組み立てる竹内さん 撮影:NOG

加工は、ウズラボの小池さんの実家が製材所なのでお願いしようと思っていたが、合い欠きに加工できる機械がなかった。竹内さんは、「こんないい木を素人が加工できないので、豊崎長屋の現場でお願いしましょう」と、山本博工務店の大工、林秀一さんに頼んで下さった。

ところがいざ作ろうとすると、縦と横の比率がわからない。竹内さんといろいろ調べたが、わからなかったので、140cmと90cmとした。横材は上から1:2の位置とした。かんなで削ったフラットな面を正面にするか、丸みのある木の表面にするかでも一瞬迷ったが、丸みのある方にした。

竹内さんは大工さんに図面を描いて渡し、自立するように、家にあったという木の箱を使って足元を固定してくれた。柱脚の金物は、一つ前の伏見町の改修の現場で作ったものが一つ余っていたので、使わせてもらうことになった。

こうして京都の数寄屋と大阪の町家の大工さんとウズラボのコラボで世界に一つの十字架ができた。組み立て式なので、分解すれば持ち運びは簡単だ。結婚式で竹内さんはこの十字架を「桝田さんからレンタルしてもらえば『どこでも結婚式』ができます」と紹介してくれた。