[ 2012.03.17 ]トーチカができるまでのこと
モータープールにj.Podを置いて、小さなオフィスとして貸すという思いつきは、震災が招いた社会変化の中で、現実味を増してきた。
原発事故が発生し、節電対策の一環で在宅勤務を導入する企業が増えていた。在宅勤務は、通勤ラッシュのストレスから開放され、育児や介護の負担も減り、仕事に集中できることから、社員の働く意欲も向上しているというデータが出ていた。またそれを機にワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現につなげようとする気運も生まれ始めていた。
新聞によると、在宅勤務はおおむね好意的に受け入れられているようだったが、中高年のサラリーマンには、「家にいると妻が不機嫌」「食事の支度が面倒といわれた」といった理由で拒む声もあるという。家の中で仕事の環境が整わない場合は、家の近く、あるいは会社の近くで小さな部屋を借りという状況も生まれるだろう。数年前に、新型インフルエンザが流行ったときに、感染の拡大を防ぐために、在宅勤務を多くの企業が導入していたことを思い出すと、リスクの分散という意味でも、社外のパーソナルな仕事場はこれから必要になるのではないかと思えた。
j.Podの標準サイズは6畳である。共同のトイレや流しが外にあれば、一人でデスクワークをするにはちょうどいい広さである。国産のスギを使ったこのようなコンパクトなプロダクトをこれからどんどん発信していかなくてはと思った。桃李舎の窓から見下ろせるところに j.Podのスモールオフィスを置き、トーチカの活動と連動して、21世紀の暮らし方を考える仲間が集まれば、いっしょに考えたいことはいくらでもあった。
トーチカの計画は、戸建て住宅の個別更新が外部にどのような貢献ができるかを考えることから始まった。それは青木仁の著書を読んでインスパイアされたからだということは、先に書いたとおりである。モータープールでやろうと考えたこともまた、青木理論の実践である。二つの工事は同時に着工することに決めた。