トーチカができるまでのこと (その9)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2012.03.17 ]トーチカができるまでのこと

トーチカができるまでのこと (その9)

工事は山本博工務店にお願いすることにした。中崎町で5棟の長屋の改修プロジェクトをご一緒させてもらっているので、お互いに気心はよくわかっている。ちょうどそのときも5棟目の現場が動いていた。現場からトーチカまでは車で10分くらいなので、都合もいいだろうと考えた。それと、山本さんだからお願いできることもあった。

中崎町、正確に言えば豊崎の一連の長屋プロジェクトは、大阪市立大学の谷直樹、竹原+小池研究室が中心になって進めてきた息の長い活動である。学生は調査・設計に参加するだけでなく、現場では古材を洗い、土壁に手を入れ、簡単な大工仕事を手伝っている。きっと職人さんには足手まといになることの方が多いと思うのだが、職人さんたちは、そこが教育の場でもあることを理解して、毎回、根気強く対応されているのに感心していた。

山本博工務店は「自作堂」という大工教室を開いていて、快適に暮らすためには、自分の家の日曜大工程度のことは自分でできるようになろうと、DIY (Do It Yourself)をすすめている。トーチカもモータープールもできるだけ自分たちの手で作りたかった。父も日曜大工の手を振るいたくてうずうずしている。山本博工務店には佐川恵美さんという、女性の名物監督さんがいる。佐川さんに相談すると、「桝田さんがやりたいようにやってください。できないところをサポートしますから」と、高岡さんと同じことを言ってくれた。

そこで責任範囲を決めて、自分たちでできるところは分離発注でやらせてもらうことになった。山本さんにおまかせするのは水道・電気工事と本格的な大工仕事。土間工事とペンキ塗り、壁面の本棚の製作は私たち。テーブルと椅子、キッチンの流し台、トイレの手洗いと便器、モータープールのj.Podの仕上げ材料は私が調達することになった。

まずはトーチカの土間工事から。天井高をかせぐために、土間コンクリートをはつることにしていた。道路からトーチカは階段1段分下がることになる。父と私が、はつる範囲を墨出しをするのを、高岡さんは心配して何度も確認しに来てくれた。墨出しは楽しかった。高岡さんのファサードの平面図を原寸で既存の土間コンに製図するのだから。

工事は父の古い仲間が駆けつけてくださって、いっとき現場は老人クラブのようだった。打ち合わせは耳元で大きな声を出さないといけなかったが、老人パワーはあなどれない。あっという間にできてしまった。そんなスタートだった。