トーチカができるまでのこと (その11)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2012.03.20 ]トーチカができるまでのこと

トーチカができるまでのこと (その11)

トーチカのキッチンは簡単につくりたかったが、足元に扉がないシンプルな流し台が意外に見つからない。桃李舎のみんなでインターネットで探して、やっとIKEAで見つけた。流し台は21,890円、排水トラップは1,990円。シンクが小さいのはがまんすることにした。

便器はTOTOの節水型にした。大洗浄4.8リットル、小洗浄3.6リットルで、当時では一番水量が少なかった。調べてみると、従来タイプは13リットル、2006年以降は6リットルが主流という。メーカーは技術革新により節水・節約を実現したトイレのリフォームを商機ととらえている。国交省もエコ改修に補助金を出しており、トーチカはこの便器でエコポイントをもらった。ネット価格は便座付で37,510円。安いけれど、一般の素人がインターネットで購入するのはリスクがある。格安の商品は返品がきかない。床排水か壁排水か、サイズが収まるか、納期はどうかなど、慎重に吟味しないと失敗する。慎重にやっていたが、モータープールの流しは失敗した。サイズがあわなかったが返品がきかず、友人にあげた。

トーチカの照明は色々な使い方を考えれば、レールをまわして、LEDのスポットライトをつけたかったが、まだ値段が高かった。安いものもあったが、明るさが足りないらしい。蛍光灯に妥協してもトーチカの電気工事だけで50万円以上になっていたので、電球色の蛍光灯を使うことにした。

建築を仕事にしているのに、実際に自分が仕入れをすることになって、こんな小さな工事で、これだけの商品と人が動くのかと驚く思いだった。つくづく日本経済の高度成長を牽引してきたのは建築産業だったのだと実感した。また、環境に配慮した商品を選択することが、消費者にできる一番簡単な環境への貢献であることも実感した。

工事予算はトーチカとモータープールをあわせて300万円以内だったが大幅に超えそうだった。しかし震災が起きて、嘘のように気持ちが切り替わっていた。お金を使うといっても、リーマンショックのときのように消えてなくなるのではない。私のお金は誰かのものになって喜んでもらえるのだし、私はその代価に快適な空間を獲得するのだ。ストックが底をついても、明日のことを思い煩うのはやめようと思った。