[ 2012.04.17 ]トーチカができるまでのこと
j.Pod工法は国産のスギで作る木造のユニット工法である。Pod(ポッド)は小さな箱という意味があり、複数のPodをjoint(ジョイント)して建物にするので、j.Podという。1-Podの広さは6畳。中ボルトだけで組み立てられるので、分解し、移設も可能である。
計画当初、入居者はぼんやりと若いクリエィターを想定していた。そこで入居者にはj.Podを購入してセルフビルドで自由に仕上げてもらい、出るときには分解して持ち出すか、無理な場合はこちらで買い取るシステムを考えていた。それならこちらの初期投資は少なくてすむ。しかし、後々いろいろなトラブルも考えられるし、入居者の負担が大きすぎる。
どうしようか考えていたときに、ここに入居したいという人が現れた。当時、日本経済新聞社の経済部の編集委員をされていた山形健介さんである。定年退職を控え、8月から独立してジャーナリストとして活動するための仕事場を探されていた。
山形さんとは2004年に出会った。小さなきっかけで取材を受け、当時開発中のj.Podのことを話すと、日経新聞の連載『新・森林産業を築く』に取り上げて下さった。これがj.Podのマスコミデビューになり、山形さんはこの連載で農業ジャーナリスト賞を受賞された。あれから8年。ずっとお世話になっている。
結局、j.Podは自分で2つ購入し、山形さんのPodは私が設計し、もう一つは入居者が決まるまで仕上げないで見本で展示することにした。簡単な共用の流しとトイレを作り、車の出し入れのための大きな鉄製の扉に、日常の出入りのためのドアをつけることにした。順調にいけば車3と車4のかわりにPodを増やしていけばいい。
電気のメータはPodごとに付け、月末に家賃といっしょに電気代を請求することにした。これを記録すると小さなオフィスの消費電力のデータになる。パソコンと扇風機、足元のヒータぐらいの電力なら、小さな太陽光パネルをつけると十分まかなえるのだが、いくら安くても100万円弱の初期投資が必要なので太陽光パネルは断念した。