[ 2012.05.21 ]トーチカのイベント
ドアを開けると、お客さんが立っておられた。2年前、地下発電所のゲストでお越しいただいた言語学者の泉原省二さんである。ダンボール箱からめぼしいものをピックアップして、テーブルに並べた。こけしも一つだけ置いておいた。
すると、「こけしもあるんですね。えっ、800円?どうしてこんなに安いの?」「まだありますけど、出しましょうか?」ということになり、結局、9つ全部並べた。
泉原さんは、こけしの顔の高さまで屈んで、じっと見ながら、これとこれ、という風に好きな顔をより分けて並べられた。選ばれなかった顔をみると、なんとなくわかる気がする。じっとその作業を見ていた。「こうしてると、なんだか、かわいそうになってきますね」と、つぶやかれている。・・・(沈黙)・・・。そして、「全部、戴きます」と言われた。
さっそく上にいる両親のところに報告に行くと、二人とも「あぁ~よかった」と言って、みるみるうちに目が潤んだ。(我が家はつくづくウエットなのだ。)口には出さなかったけど、貰い手がないまま、じっと並んで待っている人形が、だんだんかわいそうなってきて、気になってしかたなかったという。私もそうだった。
下に戻ると、残っていたほとんどの陶器も買ってくださるという。さっきまでの暗い気分が消えていた。気持ちが沈んでいた原因はこけしだったのだ。そして母が用意した晩ご飯をトーチカに運んだ。
民芸展を通して考えたことは、泉原さんとのメールでの往復書簡を紹介して日記に代える。 (泉原さん、ご了解いただき、ありがとうございます)