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トーチカ通信

[ 2012.11.02 ]原発・福島・東北

東北の手しごと展

展覧会・即売会の案内です。12月6日(木)~10日(月)まで、大阪天満宮のすぐ西側、天神橋筋商店街のギャラリー「杉 de あんじょう亭」で開催します。ぜひ、足を運んでください。繁盛亭の落語会と梯子するのもまた乙な味わいがありますよ。

企画しているのは、菅家克子さん、小笠原絵理さん、所千夏さんたち大阪の建築家仲間。今年の春、京都の展覧会でこれらの作品に出会って感動した彼女たちは、岩手県を訪問して、作者のみなさんに会い、打ち合わせを重ねて、大阪での展覧会に漕ぎつけた。

展覧会は、岩手県の3つの地域のグループが参加している。田野畑村の「ハックの家」は、NPOの福祉作業所。活動の中心は布を裂いて織る「裂き織」。大槌町の「わらび学園」は、重度の知的障がい者の生活支援施設。今回はクリスマスやお正月用の布製の小物を出品している。写真を見ていると、あれもこれも欲しくなる。

残る一つは、田老(たろう)村の「チクチクの会」(仮設内)」である。津波で村の大半が流された。震災後、岩手県の「タイマグラ」と呼ばれる開拓地に住む染色家の阿部智穂さんが、いち早く裁縫箱を持って駆けつけた。仮設住宅に暮らす女性を集めて作ったのが「チクチクの会」である。

「チクチクの会」という名前を聞くだけで、情景が浮かび上がってくる。みんなで輪になって集まり、お喋りをしながらの針仕事。草木染の鮮やかな色、柔らな糸の感触は、どれだけ傷ついた心をなぐさめてくれたことだろう。うつむいて、手を動かしながらだから、喋れることがあるだろう。耳を傾けて、一緒に作業をするだけで、分かち合える悲しみがあったと思う。

アメリカのメモリアル・キルトをご存知だろうか。エイズで亡くなった人の家族や友人が集まって、一緒にキルトを作るのだ。大切な人との思い出をデザインし、縫いこんでいく。そのキルトは、集められて、さらにパッチワークで一枚の大きな布になっていく。そんな活動がある。チクチクの会も発想は同じだ。

展覧会に出品される作品はとてもセンスがよく、オリジナリティがあり、完成度が高い。仮設住宅から、新たな工芸の工房が生まれるかもしれないと夢想する。それは私たちの希望である。震災がきっかけで広がっていくネットワーク。東北を支援したいという個々の想いを、慈善活動から一歩進めて、小さなソーシャルビジネスに繋げたいと思う。人の気持ちは移ろうものだ。支援の想いを安定させ、持続性のある活動にするために、ビジネスという発想が必要だと最近考えるようになった。来年はトーチカでの即売会ができればいいなと思っている。