第25回地下発電所 映画 『誰も知らない基地のこと』 (その2)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2013.02.17 ]憲法・平和

第25回地下発電所 映画 『誰も知らない基地のこと』 (その2)

英国領ディエゴ・ガルシア島は、インド洋にあるアメリカ軍最大の基地で、9.11以降はアフガンやイラクに対して重要な出撃拠点となっている。1966年に英米間で、島を50年間貸与する密約が結ばれ、イギリス政府は先住民全員を巧妙に騙して追い出した。現在も、騙された島民は、島への帰還と補償等を求めて訴訟を起こし係争中である。

アメリカ軍への勧誘のプロモーションビデオには、リゾート地のようなガルシア島での生活が描かれている。さんご礁の海でマリンスポーツに興じる青年達。基地にはマクドナルドや映画館もあり、「リトルニューヨーク」と呼ばれている。ハンバーガーを買っていた若者は、「どうして志願したのか」と言う質問に、「大学に行く学費を稼ぐためだ」と答えた。

沖縄を訪れた監督は、戦後65年を超えてもなお、沖縄が占領状態にあることに衝撃を受ける。保育園の上空を屋根スレスレに飛ぶ戦闘機。耳を両手で塞いで、行き過ぎるのを待つ子供たちのアップ。フェンスの内側では、兵士の人間性を破壊し、一から殺人マシーンに作り上げる訓練が行われている。ベトナム退役軍人で平和運動家に転じたアレン・ネルソンは、「米兵は世界最強の男になったような高揚感で街を歩いている」という。レイプ事件は起こるべくして起こっていると。事件を未然に防ぐためには、彼らを囲いから出さないことだと警告する。

イタリアのビチェンツアは世界遺産に登録される美しい街である。2007年にアメリカが基地の建設を発表し、イタリア政府が同意する。住民の大規模な反対デモが沸き起こり、市長選挙では基地建設反対派のヴァリアーティが当選する。公約だった基地建設の是非を問う住民投票を行ったが、その途中で最高裁が住民投票を差し止めた。

イタリアも日本も第2次世界大戦の敗戦国である。もちろんドイツにも基地はある。アメリカの基地帝国はここから始まっている。人類学者のキャサリン・ラッツは「ほとんどの基地は戦利品であり、略奪品で、決して返還されるものではない」と語る。

戦闘機を背景に、「米軍が一日に消費する原油量はスウェーデン一国の一日の消費量に等しい」という字幕が流れる。これは、読み間違えたかと思って巻き戻して確かめた。続いて、中東の基地をつなぐ石油のパイプラインの映像が流れ、地図上にパイプラインが重ねて映し出される。そこには石油利権のために軍事駐留を行う構図が浮かび上ってくる。