第25回地下発電所 映画 『誰も知らない基地のこと』 (その3)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

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[ 2013.02.20 ]憲法・平和

第25回地下発電所 映画 『誰も知らない基地のこと』 (その3)

ここからは、感想である。基地の建設プロセスはどの国においても同じであることに驚いた。アメーバのように増殖するという比喩がぴったり当てはまる。基地はアメリカ政府の要請だけではできない。ホスト国の同意があって成立するのだが、どこでも政府と国民の間には大きな乖離がある。反対運動が起こっても、密約や最高裁の判断で、なし崩しに受け入れが決定されている。

基地の建設工事が始まると、建設地の文化や歴史とは無関係に、フェンスの中にアメリカが作られる。そこに戦闘機をはじめ、大量の最新兵器が運び込まれる。基地があっても兵士がいなければ基地は成立しない。徴兵制は撤廃されているのにどうして集まるのか?プロの軍事リクルーターが、貧困層を狙って志願兵を集め、基地に送り込んでくるからである。格差が広がるだけでことが足りるといってもいい。

そのあたりの話は堤未果の『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)に詳細に書かれているが、除隊後の奨学金を代償にした入隊の勧誘はハイスクールにも及んでいる。逆にいえば、貧困がたえず生成していなければ兵力そのものが維持できない。この仕組みを内橋克人は、「貧困の装置化」と呼んでいる。

マスメディアはベトナム戦争での苦い経験をもとにコントロールされているので、基地から戦地に送り出された若者たちのその後の人生や、戦場の実態は自国の国民に隠蔽される。基地の増殖は、防衛官僚や、軍需産業を核とした巨大コンツェルン、そしてメディアが一体となった巨大な基地プロジェクトなのである。

沖縄の基地問題は民主党政権になっても解決されなかった。鳩山由紀夫は「抑止力」という言葉の前で自滅したが、彼の外交能力なら当然だという気がしてきた。オバマ大統領でさえ防衛費を増額しなければならないほどの、陰の力が存在するということなのだ。

映画の中で、1961年にアイゼンハワー大統領のホワイトハウスでの辞任演説が流れた。(上の写真)彼は第2次世界大戦で連合軍の最高司令官だった。その彼が、自分が産み出した「軍産複合体」が今やモンスターとなり、制御できない存在になってきたことへの反省と警告をテレビカメラの前で国民に向かって語ったのである。「軍産複合体に内在している野心的な巨大成長の可能性に対して、国民は十分な注意と監視をせねばなりません。なぜなら、軍部と軍需産業の一体化は、必ず恐ろしい結果を産む危険性をはらんでいるからです。この巨大な複合組織に、アメリカの自由の基を危うくさせてはなりません。」

「軍産複合体」この組織こそ、アメリカの最高権力であり、アメリカ、そして世界を支配しているということに気づかされた。この日、泉原さんが用意して下さったレジュメには、第2次世界大戦後にアメリカが介入した戦争がリストアップされていた。ざっと数えても20以上ある。「軍産複合体」の最大の敵は「平和」なのだ。