[ 2013.02.17 ]憲法・平和
原題:「Standing Army(駐留軍)」
監督:エンリコ・バレンティ、トーマス・ファツイ
2010年/イタリア
世界中に増え続けるアメリカ軍基地について取材したドキュメンタリ映画である。2007年にイタリアで起こった「アメリカ軍基地拡大反対運動」がきっかけとなって、イタリアの若い2人の監督が製作した。
2009年、民主党のオバマがアメリカ大統領に就任した。ところが1年後、軍事予算はブッシュ政権の国防費よりも300億ドルも増えていた。世界中の期待を集め、ノーベル平和賞まで受賞したオバマ政権のもとで、なぜアメリカの軍事予算は膨張するのだろうか?
その予算の多くは、世界中に存在する米軍基地に使われている。米国防省の報告書によると、世界38カ国に716の基地があり、25万人の兵士が駐留し、世界110カ国に常備軍を保有している。
「なぜ、平和な世界で基地が増え続けているのだろう?」という疑問から映画は始まる。
湾岸戦争や旧ユーゴスラビア内戦など、世界に紛争が起こると、国連軍-多くはアメリカとイギリスの軍隊-が派遣され関与する。そして紛争地域が安定すると、派遣軍は撤退するが、そのあとに、いわば、文字通り、居座りつづけるのが「Standing Army/駐留軍」である。『世界のどこかに紛争があれば、必ずアメリカ軍が派遣され、紛争後は「Standing Army」が居座る』」という繰り返しによって、アメリカ駐留軍は、アメーバのように拡大していくのである。
映画には政治アナリスト、人類学者など多くの人がインタビューに答えている。その一人である国際政治学者のチャルマーズ・ジョンソンは、世界に広がる米軍基地のネットワークを、「古代ヨーロッパに君臨したローマ帝国のような「帝国化」の象徴だ」と語る。
カメラは、沖縄、インド洋に浮かぶイギリス領のディエゴ・ガルシア島、イタリアのビチェンツァの基地に入り、それぞれの基地問題の現状を描いていく。
そうしてあぶりだされるのが、「産軍複合体」と呼ばれる、「死の商人」の存在である。世界各地に、基地や武器関連を輸出するグローバル軍需産業。米軍基地は、冷戦下で軍事予算を既得権化したこの利益共同体を抜きに考えられないということである。