「サイダーのあるシーン」 写真コンテスト審査発表(終わり)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2014.10.13 ]トーチカのイベント

「サイダーのあるシーン」 写真コンテスト審査発表(終わり)

私が選ぶ一枚は、「特別賞」として、駅のホームでサイダーを持った女の人の写真にしようと思っていました。これだけが唯一、飲んだ人が写っていて、その満面の笑顔が嬉しかったからです。いろんな場面で飲んで下さった皆さんの笑顔を思わせてくれました。ラベルのデザインが目指したような、昭和を感じる懐かしさがあって、さらにその人の膝の上には大きな新聞バックがあったからです。25周年記念パーティでは、新聞バックにサイダーを入れて渡しました。そのバッグではなかったけれど、その偶然も嬉しかったのです。

でも、どうしても外せなかったのが、建築現場を見下ろす手すりの上のサイダーでした。鉄とコンクリートのブルーグレイの風景の中に、ぽつんとたたずむピンク色のサイダーが、自分のように思えました。桃李舎25周年の記念企画で、私が選ぶとしたら、「桃李舎賞」として、やっぱりこれだと思いました。おまけにちょっと傾いています。そこに愛嬌も感じました。

先月の誕生日に友人から「Man On Wire」というドキュメントフィルムのDVDを貰いました。NYのWTCのツインタワーの間にワイヤーを張って、その上を綱渡りしたフィリップ・プティというフランス人のドキュメントです。ワイヤーの上を歩く映像は形而上的な美しさがあり、「史上、最も美しい犯罪芸術」とよばれました。その中で、彼のモノローグがあります。「人生はエッジを歩いてこそ意味がある。」そして、「日々、すべての発想を、真の挑戦と受け止めると、人生は綱渡りになる」

手すりの上のサイダーは、守りに入らず、エッジの上を行けという啓示にも見えました。これが「桃李舎賞」に選んだ「その心」です。

皆さんからメッセージが届いています。最優秀賞の方は、「かなり驚きました」ということですが、私が驚いたのは、女の子の横に座っているのは「お兄さん」ではなく、「お母さん」だったことです。あの食堂は、ベトナムのお気に入りの鳥フォーのお店で、体にしみるようなスープにはまっておられるそうです。

岸和田のだんじりの投稿者は女性です。「まさかもらえるなんて!」と驚きのコメントでした。桃李舎賞の男性は、「桃李舎の方々に気に入っていただけたのが何よりも嬉しいです。『桃李舎を感じる…』」という文に、職場に居ながら吹き出してしまいました」、だそうです。ブラインドの写真の方は、娘さんと外に撮影に出かけようとしたら、玄関のブラインドの影が面白かったので、そこで撮りましたということでした。

駅のホームの写真の方からのメッセージは、「桝田さんの分身(イメージ:孫悟空の毛^^)が色んなところを旅して、色んな空気を吸ってきてるみたいで楽しいですね」でした。

ほんとにその通りで、いろんなところを旅したような気持ちになっています。写真の中の分身は、東洋的な美人にも、おちゃめな女の子にも、庶民的な娘にも、クールな都会の女にも、見えます。でも、別の誰かになれるわけでもなく、これからも自然体でやっていこうと思います。

この企画に協力して下さったみなさん、どうもありがとうございました。楽しかったです!