「サイダーのあるシーン」 写真コンテスト審査発表(その2)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2014.10.11 ]トーチカのイベント

「サイダーのあるシーン」 写真コンテスト審査発表(その2)

トーチカの壁の前で、腕組みをして写真を見つめていた審査委員長の友人は、「最優秀賞はもう決めたんだけど、後が難しい・・」と言いました。「えっ、どれが最優秀?」と尋ねて、友人が指差したのは、粒子が粗くてちょっとピンボケの写真でした。「ほら、ここに女の子が写ってて、隣にお兄ちゃんみたいな人が座ってるじゃない。近所の家族がご飯を食べに来るような安食堂のテーブルに、さりげなくある感じがいい」

そう言われて、初めて白い夏もののワンピースの小さな後ろ姿に気づきました。私が素通りした写真に生命が吹き込まれ、とたんにエスニックな香りや下町の喧騒が漂い、ざらつき感まで個性として感じられます。なるほど。

友人は、「人の気配が感じられる写真がいいと思うんだけど、上手い写真やかっこいい写真をはずすわけにはいかないな」と言って、レンガ倉庫の夜景と、ブラインド越しの光に浮かぶ写真(タイトルはSkyscraper)を見比べて、レンガ倉庫を「技能賞」に選びました。ブラインドの方は不思議な写真です。「どうやって撮ったんだろうね、合成かな?」と、二人で話していました。

青いプールの写真は「ホックニーの絵みたい。向こうにいる太ったおばさんがいいね。水に揺れる建物の影もおもしろい。でも、私が撮りそうな写真だしな・・」そうつぶやきながら、外して、岸和田のだんじりを選びました。

「どうして?」と尋ねると、「他の写真は、サイダーを片手で持ってるのに、これだけ両手でしょ。片手のは自分で撮ってるけど、これは誰かに持ってもらってるのよ。『こんな感じ?』とか言いながら、協力してる友達を感じない?楽しんでくれてる感じがいい。」そう言えばそうだ・・。「じゃこれ、敢闘賞」

そうして上位3賞が決まりました。戦う岸和田の男たちの祭りを「敢闘賞」としたのは上手いなと思ったのですが、友人は大相撲の三賞にかけたのだそうです。サイダーを持つ手のバンドエイドに敬意を表して。「けがしても、ひと場所がんばった力士に贈ることもあるし」とも言ってました。

審査基準は翌日、メールで届きました。『サイダーもの言わざれども、写真おのずから人の気配あり』これは、『桃李もの言わざれども、下おのずから蹊(みち)を成す』にかけてくれたのです。

応募して下さった皆さん、審査風景を再現してみましたが、イメージしてもらえたでしょうか?友人を審査委員長に頼んでほんとによかったと思っています。桃李舎の25周年記念サイダーのコンテストにふさわしい作品を選んでくれました。敬意を表して、友人が送ってくれた写真を紹介します。このコンテストのアナウンスをした3月26日のブログの3枚の写真もそうです。あらためてご覧ください。次回が最終回です。