『原子力神話からの解放』 高木仁三郎 (その1)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2012.06.14 ]原発・福島・東北

『原子力神話からの解放』 高木仁三郎 (その1)

野田首相が大飯原発の再稼動を宣言した。以下に6月8日の記者会見から抜粋する。

『国民生活を守る。それがこの国論を二分している問題に対して、私がよって立つ、唯一絶対の判断の基軸であります』

『豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません』

『数%程度の節電であれば、みんなの努力で何とかできるかもしれません。しかし、関西での15%もの需給ギャップは、昨年の東日本でも体験しなかった水準であり、現実的には極めて厳しいハードルだと思います』

『仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます。仕事が成り立たなくなってしまう人もいます。働く場がなくなってしまう人もいます。東日本の方々は震災直後の日々を鮮明に覚えておられると思います。計画停電がなされ得るという事態になれば、それが実際に行われるか否かにかかわらず、日常生活や経済活動は大きく混乱をしてしまいます』

以上。これがブラックユーモアだとしても笑えない。原発政策が「国民生活」を誤った方向に導き、原発事故が、福島の人々から、今現在も「豊かで人間らしい暮らし」を奪っている現実を前に、国の最高指導者がどうしてこういう言葉を軽々しく吐けるのだろう。

関西の15%の節電は厳しいハードルではない。関西電力のホームページを見ると、夏の午後2時の家庭内の消費電力の内訳は、エアコン58%、冷蔵庫17%、テレビ5%で、この上位3つで80%である。総消費電力のうち、家庭で消費する電力の割合が約25%とすると、エアコン、冷蔵庫、テレビが総消費電力に占める割合は25%×80%=20%である。ざっくりした計算だが、15%は決して無理ではない。すでに多くの人は、ある程度の心構えはしていたはずだ。

原発を廃炉に導くためには高度な技術と時間が必要だが、節電に技術開発は要らない。いつでも誰でもできる。原発の電力供給は全体の3割である。欲望を3割削減するだけで原発は無くせるのである。

これを稚拙な意見というなら、今も原発の「安全神話」を信じる首相の稚拙さはどうだ。「福島の人たちの苦痛に思いをはせ、我々も、節電の苦労ぐらい、引き受けようではありませんか」と、どうして言えないのだろう。

突発的な節電によるリスクは確かにあるが、原発事故がもたらすリスクの大きさはレベルが桁違いだ。どうして、今、この目の前の夏の数週間のリスクと、何世代にもわたるリスクを天秤にかけられるのだろう。

今、できることは、節電と署名、そして、原発のことを勉強することだ。今週、高木仁三郎の「原子力神話からの解放」を読んだ。 2000年に書かれた、「原発神話」をことごとく論破した本である。著者は生涯、反原発を貫いた市民科学者である。最初に彼の本を読んだのは、1986年、チェルノブイリの事故の年だった。昨年の事故直後に読み直して、当時の警告が今を予言していたことに驚いた。衝撃的な内容だったのに25年の間に全く頭から消え去っていた。彼の本はどれもわかりやすい文章で書かれているので一度読んでみてください。