[ 2012.12.23 ]構造デザイン
いよいよ今月は第3回目で、学生の最終発表会だった。一人目は、浄土寺浄土堂。重源の大仏様の組物の一部を1/4のスケールで作った。中原先生にかなりお世話になったようだが、よくできている。木を自分の手で刻むことで、木の特性をつかめたはずだ。次は大阪万博の富士パビリオン。風船で作った完成形とあわせて、ゴムホースを使って、空気膜のチューブによる形態創生を実演で説明した。
法隆寺の食堂は礎石を据えるところから屋根を葺くまで、建設のプロセスがわかる模型を作った。虹梁(こうりょう)、地覆(じふく)など、伝統構法の部材の名称も説明でき、これは今後の教材に使えそうだ。F・オットーのケルンのダンス場は力作だった。布と糸で作った模型と合わせて、石鹸水で膜構造の原理を説明した。針金を曲げて作った枠を石鹸水につけると、面積が極小になるように膜を張る。美しい曲面ができると歓声があがった。
葛西臨海公園のゲストハウスはプラスチックの板をレーザーカッターで加工し、実物のプロポーションのマリオンを作った。RCの耐震コアと華奢なフレームを連結する水平ブレースを、つけた場合と外した場合を比較し、その効果を説明した。西有田タウンセンターのクレーンは複雑な形を図面を読み解いて作った。設計の要となる転倒モーメントの処理の方法を模型を使って説明した。
トロハのマドリード競馬場。これはケミカルウッドを200℃で加熱して作った。また、薄いアクリル板で曲率の異なる3種類のシェルを作り、コインを載せて剛性を比較した。日向市駅は、特徴的な変断面の湾曲集製材を1/10で作成した。ジグに薄い木のラミナを重ねて集成材を作り、それを切断し、ひっくり返して結合して梁を作るプロセスを実演した。どちらも中原先生の指導の賜物だ。残る3作品は完成度をあげて来年の発表となった。
その建築を初めて見る人に、どうすればわかりやすく構造を説明できるかを考えて模型を作る課題だった。荷重の支え方、スケール感、接合部のディテールなど、たくさんの発見があったはずだ。回を重ねるごとに、学生に積極性がでてきたのは嬉しかった。教える側が、手取り足取り、少しお膳立てをし過ぎかなとも感じるが、津田さんは、なんとか学生にものづくりの楽しさを教えようとがんばっている。中原先生との完璧なコンビネーションで、今後、この講座は進化を続けるだろう。プレゼンの講評は楽しく、勉強になった。津田さん、ありがとうございました。