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トーチカ通信

[ 2013.01.05 ]本・映画・演劇・美術・音楽

映画 モンサントの不自然な食べもの

年末に見逃したので、第七藝術劇場まで自転車を走らせた。淀川に架かる十三大橋は約700m。大阪でこれほど空が広い場所はないので、この橋を渡るときはいつも心が開放される。

このドキュメンタリ映画は衝撃的で、怖かった。七藝は今日が最終日だったけど、もしどこかで上映していたら、無理をしてでも観てください。http://www.uplink.co.jp/monsanto/

アメリカに本社を構えるアグロバイオ企業「モンサント社」は1901年に設立され、今では、世界の遺伝子組み換え作物市場の90%を占める多国籍企業である。監督のマリー=モニク・ロバン(フランス人、ジャーナリスト)は、世界の食物市場を独占しようとするこの企業の真の姿に迫る。

モンサント社が過去に発売した商品は、ベトナム戦争で使われた枯葉剤、農薬、PCB(日本のカネミ油症事件の原因物質)・・と書けば、それだけでダーティな気配が漂ってくる。

遺伝子組み換え作物(Genetically Modified Organism、GMO)とは、ある特定の遺伝子を別の遺伝子に挿入して、新しい性質に換えられた作物のこと。たとえば、特定の除草剤で枯れない大豆がそうだ。除草剤とGMの種をセットで買えば、手間をかけずに大豆が収穫ができる。この種には特許がかかっているので、自分が育てた作物から種をとれば、特許侵害で訴えられる。したがって農家は毎年種を買い続けることになる。

映画では、GMの大豆を作っていない農家が、隣の農場から風で飛んできた花粉で自然に交配してしまったにもかかわらず、特許侵害で多額の賠償金を請求されていた。こうして、支配の手がどんどん広がっていくのだ。モンサント社は46カ国に進出している。

インド。綿花の種子会社をモンサント社が買収し、GM種の値段は、これまで現地で生産されていた種の値段の3倍になった。農家は毎年、除草剤とセットで買わされるが、収穫した綿の販売価格が上らないため、借金を背負って破綻した農民の自殺者数が急増している。

メキシコ。北米自由貿易協定が締結される前は、自給自足だったこの国が、1994年に協定が結ばれ、現在は40%を輸入に頼っている。日本の米に相当する主食はトウモロコシだが、GMの種が国内に入ってきて、あっと言う間に地元の在来種が汚染されて、絶滅の危機にある。そうなれば、モンサントのGM種を買い続けなければならない。以前は使っていなかった除草剤の散布で子供の健康が蝕まれ、食欲がなく痩せた子供がクローズアップされたときには、怒りで体が熱くなった。

人体への影響はないはずがないが、悪影響を告発した研究者や医師は次々に弾圧され、その世界から抹殺されていく。モンサント社と政治家・官僚との癒着、安全性のデータの捏造。ここまでわかっていても、モンサント社の暴虐を止められない。

インドの哲学者が語っていた。 「世界の食料支配、それはどんな爆弾より脅威である・・・」

この映画を観ている間、この問題は原発と似ていると思っていた。あれだけの事故があったにもかかわらず、原発を推進する電力会社。電力会社と癒着する政界と経済界。一度、原発を誘致すると、動かし続けなければいけない構造も同じだ。

TPPはアメリカ主導の協定である。トウモロコシの原産国であるメキシコで、在来種がGMOに駆逐された状況は、日本の米の将来を見るようだった。「知ることで守れる未来がある」とチラシにある。とにかく今、観てよかった。