[ 2013.01.20 ]森・里・海
1月15日のブログの続き。12月の丹波の里山体験の報告である。里山の案内人は、宮川五十雄さん。NPO法人森の都研究所代表で、生物多様性かんさい代表世話人である。
宮川さんは「僕は皆さんより若いので、先生っていう感じではありませんが、植物、動物、昆虫の専門家です。どんなことでも質問してください」と自己紹介された。
上の写真は、スタート地点の鴨庄(かものしょう)の集落である。ここで聞いた話の要点は以下の通り。
「山裾には湧き水が多く、川が流れています。集落はそのような水が豊かな山と平地の境界にできます。山、水路、集落、田んぼ、畦・・これが里山の風景です。植林したスギやヒノキが見えますが、後ろの雑木林は落葉広葉樹林や照葉樹林です。古い山ほど木の種類が多いです。」
「食料、燃料、道具、肥料・・普段の生活に必要なものは雑木林で調達します。木槌を作るならカシ、箸や下駄はヤナギという風に、人々は、どの木をどう使えばいいかをよく知っているのです。広葉樹は焚き木に適していて、カシやシイは良く燃えます。薪にするために木を切っても、広葉樹はひこばえといって、切り株からまた枝が出て、20年ぐらいでまた伐採期が来ます。こうして木が循環されるのです。」
「田んぼのまわりにはカヤ場(かやば)があります。刈ったカヤは茅葺屋根の材料になり、使い終わったカヤは田んぼの肥料に鋤き込んで使います。カヤを田んぼに鋤き込むときは、昔は牛に踏ませていました。秋の七草はカヤ場に多いですね。」
漫然と眺めていた風景に、意味や物語が加わることで、親密さが増して来る。
平地から少し山に入ると、湿地帯が広がっていた。ここは生物の宝庫。宮川さんは、「30cm四方という小さな範囲を観察し続けるだけでも、多くのことがわかります」と、嬉しそうに話す。ここにいる無数の生物は、絶えず変化している。たとえば鹿が歩いて、地形をわずかに変えるだけも小さな生物にとっては環境の激変である。促されて、30cm四方の世界に目を凝らしてみた。一つ、二つと植物の種類を数えるうちに、見えなかったものが見えてきた。「穏やかな環境でも1ヶ月~2ヶ月で寿命を終える生物もあります」という声が続く。水の中の小さな命の営みを少しだけ垣間見ることができた。