木村正樹作品展 GLOBE Ⅳ@トーチカ (その1)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2013.05.24 ]トーチカのイベント

木村正樹作品展 GLOBE Ⅳ@トーチカ (その1)

木村正樹さんの展覧会が始まった。初日のお客さんは、ご近所のみなさんや木村さんの関西の友人。あちこちで話が弾んだようで、オーナーとしては、とても嬉しい。

成り行きで、木村さんと奥さんの麻子さんはトーチカの上の我が家で泊まることになった。20年前に、数回お会いしただけで、お互いのことは何も知らなかった。それなのに、秋田から車ではるばるやって来られたのは、この『トーチカ通信』のお陰である。トーチカの写真と活動報告を見て、「ここだ」と思って下さったらしい。

二晩続けて、深夜まで話し込んだ。ブログを書いていてよかったと思うのは、拾い読みしてもらっていると、私の自己紹介は既に済んでいるということだ。だから話題を探る必要がない。木村さんはいきなり深く切り込んでくる。東北のこと、放射能のこと、慰安婦問題、日本とアメリカのこと、文人画のこと、タルコフスキーのこと、プガジャのこと。

木村さんは、1952年秋田県横手市生まれ。早稲田の政治学科を卒業。兵庫県の家具工場に就職したあと、画家の孫雅由に出会って美術を志す。故郷の秋田に帰ったのは2000年。昨日、プロフィールを見るまで何も知らなかった。

ギャラリーのオーナーには、深夜に一人で作品に向き合えるという特権がある。今夜も、 しーんと静まり返ったトーチカに一人でいた。通常、ギャラリーの空間は無個性であることが望まれる。しかしここは違う。トーチカに内在している個性と、作品の個性が、最初はぶつかり合うように見えるのだが、空間と作品の間に、調整と同化といった相互作用が生じて、実存的な空間が立ち現れてくる。

モノクロ写真の雪景色。そこには音がない。雪の上に落ちる雪は音を立てない。沈黙を重ねるように降り積もった雪は究極の抽象画に見える。しかし目を凝らすと真っ白な世界に黒い小さな人影が見える。どこかに向かって歩いている。そのとたんに、白い抽象画に命が吹き込まれて、小さな人間へのいとおしさが胸に溢れてくる。

1本の電飾に縁取られた大きなテントが建っている。旅回りの芝居かサーカスのテントのようだ。ここは裏口である。出番を待つ役者のためか、テントの前は大きな水溜りのように白い光が落ちている。フェリーニか、アンゲロプロスの映画で見た旅芸人が、一列になって笛を吹きながら、通り過ぎて行く幻影が脳裏をよぎる。この息詰る感情は、郷愁? 1枚の写真が、いろいろな時代の私にワープさせる。映画のラストシーンに浸るように、写真の前に立っていた。

一方には、世界で初めての核実験の白い光の塊、リトルボーイ、手榴弾、浦上天主堂とロシアのイコンのアッサンブラージュがある。

こうして書いたものの、なかなか口ではお伝えできないので、ぜひここでご覧になってください。麻子さんは洋裁をされています。そんな話もお聞きください。