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トーチカ通信

[ 2013.08.18 ]原発・福島・東北

福島レポート2013

NHKの朝ドラの「あまちゃん」がイイという評判を聞いて、途中から見始めたが、すっかりハマッている。宮藤官九郎(クドカン)の脚本は、幾重にも張り巡らせた伏線がスゴイというので、少し意識すると、ほんとに隠れたレイヤーが見えてきてこわくなる。

舞台は岩手と東京。9月28日の最終回に向けて徐々に佳境に入ってきた。ドラマは今、2010年という設定なので、東北の大震災を描く覚悟が伝わってくる。

主人公は、岩手県出身の海女の「天野アキ」。東京のアイドルグループGMT47(GMTは”地元“のもじり)でデビューするが、飛び出して、NHKの幼児向け教育番組『さがしてこわそう』のお姉さん役でソロデビューを果たす。これは、「身近な物を見つけては壊すことで、物の大切さを逆説的に教える斬新な新番組」で、劇中劇では大きな陶器の壷をハンマーで粉々にしても、アキちゃんの「時間の逆回転」の魔法で、みるみる元に戻る映像が繰り返される。

『さがしてこわそう』は、クドカンらしい、イギー・ポップの『SEARCH & DESTROY』のもじり?という節もある。ベトナム戦争の米軍の作戦名をタイトルに歌った70年代のロックであるが、それは余談。

「時間は逆回転できない」ということを、先週、福島を半年振りに訪問してから、しみじみ考えていた。津波と原発事故で、多くのものが壊れた。命、家、自然、無数の人間関係・・・。壊れたものは元に戻らない。元に戻そうと考えると無力感に襲われるが、そこから新たに始めるのだと考えると、希望が見えてくる。それを、さっき福島の友人に話すと、「全部壊れたんじゃない。残ったものもある。残ったものがいかに大切かに気づいて、福島に留まろうと人々は決めたんだ」と言った。

私はプロテスタントのクリスチャンで、大阪のルーテル教会のメンバーである。先日、福島県のルーテル教会の牧師から電話があり、福島市内に子どものための施設を作りたいのだが相談に乗ってもらえないかと言われた。先週、福島を訪問したのは、とにかく現地で話を聞こうと思ったからだ。

大阪にいてはわからない現地の様子は順次報告し、みなさんの知恵もお借りしたい。設計者のスタンスは、自我を捨てて、福島の人々の心に寄り添い、そこに必要とされているものをまず適確に把握すること。形を考えるのはその先だと思っている。言うのは簡単だが、ものすごく難しいことだ。

昨年、南相馬市の除染の済んだ公園に、仲間と作った『まち家具』を、一人で見に行った。濃い緑の中、涼しそうに、ポツッと建っていた。上の写真である。中には時計が掛かっていて、野球のグローブが椅子の上に置いてあった。子どもたちが使ってくれてる様子が伺えて嬉しかった。

しばらく途絶えていたブログを再開します。時間が前後しますが、書き残しておきたいことから書いていきます。また読んでください。