映画 日本国憲法 (その1)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2013.09.13 ]憲法・平和

映画 日本国憲法 (その1)

6月の地下発電所は、参議院選挙の直前ということもあり、この映画を観て憲法について話し合った。報告の前に、まず映画を紹介したい。監督はジャン・ユンカーマン。世界の知識人が、日本国憲法について語った貴重なインタビュー集である。製作は2005年。イラク派兵をきっかけに、改憲論議が高まったときである。

最初に登場するのは、ジョン・ダワー。歴史家、有名な著書に『敗北を抱きしめて』がある。彼が日本に関心を持ったのは、ベトナム戦争が激化し始めた1960年半ば。戦争に突き進むアメリカに対して、終戦直後の理想を大切に守ろうとする日本人を尊敬したという。

「50年代、60年代にその理想を守り続けたのは、日本政府というより、日本の一般市民でした。戦争の悲惨さを忘れない女性たちや、元兵士たちでした」

「日本には、非軍事的なアジア、および非軍事的な問題解決のモデルになれるという理想がありました。しかし、日本政府はそれを実現する大物政治家を輩出できませんでした」

2番手は、ダグラス・ラスミス。政治学者、著書は『ラディカルな日本国憲法』など多数。彼は、ベトナム戦争当時、海兵隊で沖縄の基地に駐留していたが、除隊後日本に留まる。映画では日本語で講演する様子が撮られている。

「日本国憲法は主権在民の原理ですから、主語は「われわれ日本国民は」です。国民から政府への命令という形で書かれています」

「国民が国家の権力を抑えるために憲法を作ったのです。その真ん中に、憲法9条があります。戦争をする権利、権力を政府に持たさないという命令が9条です」

日高六郎(社会学者、元東京大学教授)は、敗戦国・日本を占領したアメリカ軍が、明治憲法を日本国憲法に変えるプロセスを次のように語っている。

日本国憲法はGHQが押し付けた憲法ではない。幣原内閣は松本蒸治を委員長とする「憲法問題調査委員会」を発足し、自主憲法を作ってGHQに提出した。これはうわべだけの改憲案で、主権は依然として天皇にあり、軍部の力はほんの少し弱めたものの、中央集権的な立憲君主制を否定するものではなかった。アメリカ側は拒否し、日本政府に任せては理想とする憲法はできないので、規範となる草案を示さなければならないと考え、介入する。

一方、高野岩三郎たちの「日本憲法研究会」も自主憲法を提出している。こちらは民間憲法。発想としては、現在の憲法と全く同じ。GHQはこれを読んでいる。

ジョン・ダワーは、当時、日本人の委員会がいくつもあり、さまざまな進歩的な草案を作成していたことをアメリカ側は知っていたと言い、「政府の委員会よりはるかに革新的な考えをもつ日本人がいる」という発言を紹介している。

ダグラス・ラミスも、憲法を政府に押し付けたのは、数ヶ月の間続いた占領軍と日本国民による、一種の短期同盟だったという。「同一の目的をもつ彼らが、政府の権力を制限する憲法を日本政府にのませたんです。政府の立場からすると、押し付けられたと感じるのでしょうね」