追悼 ルー・リード  25周年記念パーティの余韻の中で|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2013.10.31 ]本・映画・演劇・美術・音楽

追悼 ルー・リード  25周年記念パーティの余韻の中で

その歌声が流れると、どんなざわめきの中でも、耳が反応してしまう声が3つある。
ニール・ヤングとミック・ジャガーとルー・リードである。

ルー・リードの声は誰にも似ていない。特別だ。不意打ちで、クリアな音で聴こうものなら、腰が砕けてしまう。今年の9月。誕生日に、友人がメールで、クルト・ワイルの「September Song」を送ってくれた。ルー・リードがカバーした曲だった。そうと知らずにクリックしたら、突然スピーカーから彼の声が流れて、椅子に沈み込んでしまった。深夜の仕事場で、ぼーっと月を眺めて、一曲まるまる手を止めて聴き入った。

25周年のパーティのコンセプトはサーカステントの芝居小屋だった。会場で流す音楽をあれこれ、楽しみながら考えていた。開場からオープニングまでの1時間は、フェリーニの映画音楽と決めたが、そのとき、ルー・リードの『ベルリン』のアルバムと一瞬迷った。でも深夜のぐだぐだの中ならイケるが、15時のオープニングのお祭り気分にはやっぱりフェリーニだなと思った。

食事・歓談の間には、クルト・ワイルの音楽を音響担当の山中さんが流してくれた。もちろん、ルー・リードの「September Song」も入れてもらった。スティングがカバーした「Mack The Knife 」も。クルト・ワイルは「三文オペラ」をはじめとするブレヒトの芝居の作曲家である。パーティで流したのは、ブレヒトを上演していた「劇団黒テント」へのオマージュでもあった。

25周年の準備期間に、久しぶりに集中してルー・リードを聞き直していた。ベルベット・アンダーグラウンドの時代から、90年代のローリー・アンダーソンに捧げられた『Set The Twilight Reeling』まで。このアルバムは、彼がちらっと出演した映画『ブルー・イン・ザ・フェイス』に提供した曲が入っている。2曲目の「NYC MAN」が特に好きで、事務所でもよくかける。4曲目の「Trade In」もいい。

ルー・リードのライブは2回行った。最初はたぶん1992年だと思う。厚生年金会館で最前列の中央だった。汗が飛んでくる距離で、半狂乱だった。

あのライブはいつだったか思い出していたところに、この訃報である。小さな新聞記事を見て放心した。昨日は朝からCDをかけて仕事をしていた。これから、こうして好きなミュージシャンを一人ずつ失っていくのかと覚悟した。でも音楽は残っている。記憶もまた永遠だ。