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トーチカ通信

[ 2014.01.25 ]未分類

信用金庫のこと

昨年、ある雑誌で城南信用金庫の記事を読んで、この岩波ブックレットを買った。信用金庫の歴史と崇高な理念を知って、銀行の口座を解約し、信用金庫に移す準備しているところである。

私は2008年のリーマン・ショックの直前に、銀行に預けていた貯蓄を、銀行員の言われるままに運用して、あっという間に失った。なぜ、アメリカのサブプライムローン問題で、日本の私がこういう事態に陥ったかを調べて、ようやくアメリカの「グローバル資本主義」がどういうものかがわかった。

信用金庫は、地方の小さな銀行と思っている人が多いが、全く違う。その理念は、「銀行に成り下がるな。あれは利益を目的とする企業だ。うちは世のため、人のために尽くす社会貢献企業である」という城南信用金庫の元会長の言葉に集約される。

1844年、イギリスのマンチェスターで、貧しい労働者が、自分たちでお金を出しあって、良質な生活物資を仕入れ、皆に安く販売する企業を作った。それが協働組合の起源だといわれている。株式会社のような出資額の多少によらず、一人一票の平等原則で民主的に運営される。大株主の意向で問答無用ということはできない。

イギリスの協同組合運動はドイツに広がり、明治の初期にドイツに留学していた2人の内務大臣が、その理念を学んで帰国する。明治維新で経済が発展し、財閥ばかりが富み、貧富の差が拡大していた頃である。彼らは自由競争に伴う弊害を克服するために、自助の精神や地方自治を基本とする協同組合を日本に導入したのである。

そこから信用金庫が誕生するが、モデルは日本の江戸時代に既にあった。二宮尊徳の報徳仕法である。自分の収入に上限を設け、余ったものはみんなの財産として貯蓄する。そこからお金を借りて事業に成功すればお礼に配当を払う。お金をコミュニティの中で活かし、お互いに感謝の心で経済発展を目指すという道徳的に優れた仕組みである。

現在の信用金庫は、地域の発展のために作られたもので、地域を守って地域の人々を幸せにする公共的な使命を持った金融機関である。

銀行と比較してみよう。銀行は株式会社なので株主の利益が優先され、主な取引先は大企業である。一方、信用金庫の主な取引先はその営業地域内の中小企業や個人である。中小企業は資本金9億円以内・従業員300人以内に限定されている。銀行は利息を得るためにお金を貸すが、信用金庫は「貸すも親切、貸さぬも親切」で、たとえ高い利息を得られる場合でも、それが事業主にとって不健全な運営に使われるお金なら貸さないという。

たとえば、私が銀行に預けたお金は、意志に反して、支援したくない大企業の運営に廻されているかもしれないが、大阪の信用金庫に預けた場合は、この地域の発展と、助け合いのために運用されるのである。

このブックレットで紹介されている城南信用金庫は、震災後、脱原発を宣言し、地域の節電を促すために、「節電プレミアム預金」などの金融商品を赤字覚悟で打ち出している。先日、東京で事務所を立ち上げたばかりの友人に、「城南信用金庫って知ってる?」と尋ねると、「私の事務所の口座は城南信用金庫よ」と、少し得意そうだった。そうか・・、知ってる人は知ってるんだ。

母は長年、信用金庫で小さな積み立て貯金をしている。決まった日の決まった時間に、同じ人が集金に来て下さる。振込みではなく集金に来られるのは、母の顔を見ることで、元気かどうかを確かめたいからだとおっしゃる。昼間、年寄りだけを家に置いている娘にすれば、とてもありがたい。その方に、口座の開設をお願いした。