団的自衛権行使容認の閣議決定(その5)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2014.07.06 ]憲法・平和

集団的自衛権行使容認の閣議決定(その5)

一触即発の大地で、丸腰こそが事業達成の最大前提である。中村哲さんはきっぱりと、「軍服を着た人は要らない」と言われた。スライドの水路建設の写真には、低空飛行する米軍のヘリコプターが写っていた。機銃掃射の標的にされたこともある。しかし、大地の上では、日本人だからという理由で、標的にされたことはなかったという。

それは、アフガニスタンの人たちは、日本が戦争に加担しないという「掟」を知っているからで、ある意味「美しい誤解」かもしれないけど、日本の平和的なイメージが好印象を与えているという。

しかし、それはどんどん崩れていく。2001年の9.11以降、日本はブッシュ支持を真っ先に表明し、自衛隊はペルシャ湾上での給油活動を行った。厄除けのように、日の丸とJAPANの文字を車に描いていた中村さんは、それが効かなくなったときに消す。自衛隊のアフガン介入によって、日本人の安全はいちじるしく脅かされている。それが現実である。

2001年10月の衆議院の「テロ対策特別措置法審議」に参考人として出席した中村さんの発言を紹介したい。ここでは一部だけ。

アフガンの現状を話したあと、本題に入り、自衛隊派遣が、取りざたされているようだが、当地の事情を考えると有害無益であると言い切ったあとにこう続く。

「私たちが必死で-笑っておられる方もおられますけれども、私たちが必死でとどめておる数十万の人々、これを本当に守ってくれるのは誰か。私たちが十数年かけて営々と築いてきた日本に対する信頼感が、現実を基盤としないディスカッションによって、軍事的プレゼンスによって、一挙に崩れ去ることはあり得るわけでございます。」

「アフガニスタンに関する限りは、十分な情報が伝わっておらないという土俵の設定がそもそも観念的な議論の、密室で進行しておるというのは失礼ですけれども、偽らざる感想でございます。」

議事録では笑った議員は特定できないが、この重い内容を理解する気もなく笑った議員がいたのだ。そして、自民党の亀井善之委員が、「自衛隊の派遣が有害無益でなんの役にも立たないという発言」の取り消しを求め、自衛隊イージス艦のインド洋派遣となる。

澤地さんは、「命がけで医療と水確保をおこなってきた中村医師の18年間へ、「日本」が出した結論を心に留めたい」と書いている。