上田正樹とSouth To South|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2014.09.07 ]本・映画・演劇・美術・音楽

上田正樹とSouth To South

大阪を中心に活動しているArts&Craftsの創立20周年記念パーティのお招きにあずかった。Arts&Craftsは、都市の中の埋もれたストックをリノベーションし、魅力的な不動産として提供しているユニークな会社である。オフィスをホステルにリノベーションしたHOSTEL 64の運営も順調で、堅実にファンを増やしている。http://www.a-crafts.co.jp/

社長の中谷ノボルさんは大学の後輩で、ご自宅の構造設計を手伝ったご縁もある。設計のチーフの枇杷健一さんとも10年以上のお付き合いになる。

さて、そのパーティ。会場は梅田のクラブ・クアトロで、なんと!上田正樹のライブ付きだった。案内状には上田正樹とだけ書いていたので、軽いソロライブと思いきや、4曲目から、有山じゅんじ!が登場し、ドラムは正木五郎で、South To South再結成という本格的な2時間ライブだった。

最前列中央のスタンディングのテーブルで、久しぶりにバーボンをゴクゴク飲みながら、関西の大人のR&Bに酔いしれた。有山じゅんじは、憂歌団との共演で3回ほど観ていたが、上田正樹は初めてだった。South To Southは今年が結成40年。私が高校生のときに解散した、伝説のバンドである。

「梅田からナンバまで」をはじめとする往年の名曲に続いて、東北の震災の後に、故郷を離れて暮らすすべての人たちへむけて歌うようになった「I’ve been working on the railroad(線路は続くよ)と「My old Kentucky home」に、今の彼らを感じた。

みんな歳を取った。上田正樹は65歳だ。でも、みんな最高に素敵だった。軽妙で洒脱なMCのゆっくりと柔らかな大阪弁とその歌に、普段意識しない「home」の感覚が体の隅ずみまで満ちていく。私は今この歌を、大阪人の血で聴いてると思った。

言葉にすればありきたりだけど、大人のR&Bには愛があった。そういうものを感じるステージが、これまであったか思い出せない。歳を重ねて力が抜けた強さと優しさ。価値感が移ろう社会の中で、変わらないものを持ち続ける人たちがいる。人を傷つけたり、嘘をつかない(罪のない小さな嘘はつくかな)と思える人たちが、ここにいるということに、ものすごく力づけられた。

有山じゅんじの「ウーララ」もよかったけど、私にとって、あの夜の最高の一曲は、上田正樹の歌だった。

「次の曲は英語の歌詞なので説明します。僕は車の免許を持ってません。仕事の帰り、たとえば駅に降りると彼女が待ってくれてる。すると、そこだけ光が差したように、彼女の顔が輝いて見える。帰り道を手をつないで歩いていると、嬉しくなってきて、ハミングしてる。ちょっといちびって、スキップしたり、ダンスしたり・・。今の僕が求めるのは、こういう幸せです・・・『La La La Song』」」

さりげない言葉で、アジアのこと、平和のことを話し、最後にこの新しい曲を歌ってくれた。

中谷さん、いい夜をありがとう。起業当時から変わらない、飾らない笑顔と、スタッフの皆さんのチームワークが素敵でした。大阪、盛り上げていきましょう。私もがんばります。ぼちぼちとね。