[ 2015.08.14 ]構造デザイン
アクリルは建築基準法では構造材料として定められていないので使ったことがない。予備知識はゼロだった。住化アクリル販売から紹介してもらったアクリル板メーカーの技術担当の方に、物性のレクチャーを受けた。忙しいところ何度も電話をかけ、大迷惑だったと思うけれど、技術者マインドをくすぐられたのか、業務範囲を超えて丁寧に教えてくださった。
一番難しかったのが、木とアクリルの接着である。アクリルは柱材の役割をするので、地震時に引張りの軸力や、曲げがかかる。アクリルは硬いけれど、傷がつくとパリンと割れてしまう。だからねじを接合に使うのは難しい。そこでボンドを使うべく、あらゆるボンドメーカーに問い合わせたがそのようなボンドはないと言われ、やっとたどり着いたのが、NKSアーキテクツの末廣さんが教えてくれた株式会社オーシカだった。
オーシカのことは話せば長くなるので省略するが、HPを見ると、社長は大鹿さん。鹿印シリーズのボンドや、ディアノールという商品名だけでもそそられるものがある。
「小さいけれど引張耐力はゼロではないので使えるかもしれません」といって2種類のボンドを教えてくれた。耐力を聞くと可能性があった。そこで電話対応をしてくれた久保さんを絶対放すまいと思って、すぐに会社まで相談にいった。応接間で、普通はこのようには使わないのですが・・といいながらボンドのサンプルを2本提供してくださった。
そこで、アクリルと木を接着し、夜にトーチカの作業場で簡単な実験をした。降って沸いた仕事だったので、桃李舎のみんなの仕事のじゃまをしないように、一人で解析しながら奮闘していたが、実験はみんなに手伝ってもらった。荷重はバケツに入れた水。
イケル!とあたりをつけて、家具メーカのベリーでモックアップを作ってもらった。今度は実大なのでもっと荷重が必要だ。60~80kgの体重の人に、乗ったりぶら下がったりしてもらった。伊藤さんも今井書店の加藤さんも協力して下さり、最後の確認ができた。
今井書店での組み立ては、閉店後に徹夜で行われた。アクリルは構造材としては未知の材料なので、束板には杉板も併用している。立ち会えないのが残念だったが、大村さんが逐一、写真を取って、メールしてくれた。下の写真は最終チェックをしている大村さんと伊藤さん。これは夜通し付き合ってくださったカメラマンの山田圭司郎さんの撮影。
リニューアルオープンは、芥川賞が決まった直後だった。深夜の本棚にピース又吉の火花が並んだ。赤い表紙が木の素地に映えて綺麗だった。
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