[ 2018.01.08 ]桃李舎
2017年後半の出来事を振り返る中で、私自身のベスト3に入るのがこのサッカー体験だ。
建築に関わる老若男女で作っているA-cupというサッカーリーグがある。全国にいろんなチームがあって、2年前に「芝の上を走るのは気持ちいいよ~」と誘われて「スパイクガールズ」に入れてもらった。本拠地が東京ということもあって全くの幽霊部員だったが、ある飲み会で、宮本佳明さんに「えーっ!桝田さんサッカーやるの?僕らは大阪でやってるからおいでよ」という流れになって、A-cupの「レアル・間取り・どう?」の練習に参加させてもらった。
とはいうもののサッカーは全く経験がない。一応、1ヶ月、大阪城を走り込んで体は作ったつもりで練習に向かった。場所は宝塚市役所の目の前の武庫川の河川敷。サッカーコートはなく、どこからかゴールを引っ張ってきて、向かい合わせに置いておしまい。コートのサイズはほんとより小さい。メンバーは宮本さんが教える大学の学生を中心に、事務所のスタッフもおられる。
最初に宮本さんから直々に「蹴る・止める」の基本を30分教わったあと、即、試合。「無理、無理、無理!」というのにコートに押し出された。4人対5人で、1回10分。中学時代はバスケットボールをやっていたので、一旦、コートに出ると昔の感覚が蘇って、夢中になってしまった。なんとなくポジショニングの感覚があるのだ。
レアルの皆さんは優しいので、受け止めやすいボールをそっとパスして下さる。でも、ボールを追いかけて走るスピードを上げたとたんにこけ、方向転換をしたとたんにこけ、タッタッと後ろ向きに走っただけでこけた。つまり、こけまくった。10分の試合に5回出たあと、膝がカクンとなって力が入らなくなりマズイと思ってそこでやめた。
構造設計者には本来ポジショニングの感覚が備わっていると思う。それは全体を俯瞰して、自分がどこに走りこむのがいいのかというのは、ここに柱を立てようという勘の働かせ方と同じなのだ。
でも理屈と体が動くということは別だ。もっともっと身体を鍛えないとサッカーはできないし、危ない。翌日病院にいくと靭帯を損傷していて、膝の軟骨が老化のために磨り減っていることもわかった。膝に急激な負担を与えるサッカーよりウォーキングをしなさいと言われてしまった。
でもこの出来事がベスト3に入るのは、こけることもふくめて、体の動きと連動した心の躍動感が素晴らしかったからだ。ジョギングでは味わえないチームプレーの面白さ。噴出す汗のにおい、破裂しそうなほどの鼓動、ボールを競り合うときの湧き上がるアドレナリン。何もかもが忘れていた感覚だった。「あー楽しい」と心から思えた。そして精神がとても健全な感じがした。「健全なる精神は健全なる身体に宿る」まさにそれだと思った。
医師にはやめろと言われたが、また邪魔をしないように、ちょっとだけ練習に参加したいと思う。