[ 2025.02.21 ]トーチカのイベント
Sassy Tomo(サッシー・トモ)さんは、3歳からクラシックピアノを習ったプロのキーボード奏者である。20代で、Jaye公山、清水興さんらと共にヒューマンソウルを結成。1990年には、NYハーレムにある「アポロシアター」のアマチュアナイトで、日本人初のグランプリを獲得するという実力者。コブクロはじめ、多くのアーチストもサポートしてきた。ハンドパンと出会って、近年はソロライブを全国各地で開催している。
とても全部は書き切れない、まぶしい経歴のTomoさんだが、実は私とは幼稚園に一緒に通った幼馴染。今も「ともこちゃん」「ようこちゃん」と呼び合う同い年の友達なのだ。
5年前の結婚式の披露宴では、飛び入りで、ミニー・リパートンの『ラヴィン・ユー』をキーボードを弾きながら歌ってくれた。素敵なオリジナルの日本語の歌詞で。今、こうして書きながらも、あのときの演奏が蘇って泣きそうになる。
さて、そんな Tomoさんをトーチカにお招きして、昨年の5月にミニライブを行った。これまでハンドパンの弾き語りライブを何度も観て、ぜひ私の周りの人たちにも聴いてもらいたくなったのだ。遅まきながらライブレポートを公開する。
ハンドパンは鉄の大鍋をひっくり返したような形をしている。薄い金属板でできているので、バン!と叩くのは厳禁。調律ができない、とてもデリケートな楽器なのだ。たとえば、熱いお鍋を触るように、指でポンと触れて、「熱っ!」と手を引っ込めるように叩くと、神秘的な音が出る。Tomoさんが演奏すると、天上から音が舞い降りて、祈りのような静謐な空間が現れる。その姿は共同体の平安を祈願するシャーマンのようだ。
トーチカのイベントは久しぶりだった。トーチカに人が集まると、化学反応が起こる。どんな顔ぶれの会にするか、それを考えるのは主催者の楽しみだ。今回は夫と相談し、音楽とアートが好きな友人の顔を思い浮かべて決めた。ライブの入場料はTomoさんに相談し、投げ銭スタイルで自由に箱に入れてもらうことにした。食事とドリンクは無料とし、お気持ちあれば投げ銭に!とお願いした。
さてライブ。「少し場が温まった頃に出ていくわ」と言うTomoさんのリクエストに応え、皆さんには開演までゆっくり飲み始めてもらった。皆さん初対面と思えないほどお喋りで盛り上がっていた。
Tomoさんがステージに座り、ハンドパンを奏で始めると、しーんと場が静まった。洞窟に落ちる水滴のような音に耳を澄ましていると、ふわっと体が浮き上がる。みんなで空飛ぶ絨毯に乗って、どこか知らない世界へ連れて行かれるような感覚だ。
Tomoさんはハンドパンを叩きながら自作の歌を歌う。選び抜いた美しい日本語を音に乗せて。田舎の景色を歌うと、草の匂いが漂う。夏の乾いた土の道の熱さ、田んぼを渡る風がここにそよぐ。五感が敏感になるのはなぜだろう。
『アメイジング・グレイス』のメロディに乗せたオリジナルの歌詞も秀逸だ。この歌を聴くと、いつも父と母を思う。一緒に過ごしたかけがえのない時間。感謝の気持ち。小さな後悔。私を呼ぶ声が聞こえる。いつか天国で会えるね。そんな会話を心の中でしている。でもやっぱり、もう一度会いたい。そっと後ろを見ると、泣いている人がいる。隣の人が背中に手を当ててあげている。
ハンドパンの音は、水の中をくぐったように輪郭がなく、心の深い淵をひたひたと満たしていった。
アンコールは『人生は色鉛筆』。さびの部分をみんなで一緒に歌った。人生、いろいろあるけど、前を向いて生きていきましょう。そんな気持ちになって、ステージは終わった。
照明をつけると、夢のような時間はお終い。トーチカに現実感が戻った。今度はTomoさんを交えて大宴会。本格的なライブは初めてだったが、大成功だった。トーチカのイベントはこれからも続けていこうと思う。このトーチカ通信ももっとアップせねば。
Tomoさんの音楽に興味をもたれた方は、ぜひ一度、検索してライブに行ってみてください!この世界は体験しないとわかりません。