福島レポート2014(その4)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2014.08.24 ]原発・福島・東北

福島レポート2014(その4)

大好物の桃が福島県の名産と聞いて以来、ずっと食べたいと思っていた。福島の友人が、桃を食べるなら「あかつき」だというので、今が旬という8月最初の週末に、果樹園に連れて行ってもらった。

福島市内には無料のレンタサイクルがあるので、ギアチェンジができる「ももりん号」を借りた。目指すのは福島市の北西、「フルーツライン」と呼ばれる県道5号線沿いに広がる観光果樹園である。

片道10kmの炎天下のサイクリングは、高校球児の練習並みに過酷だったけど、こんな田園風景の沿道を走ると、田んぼの上を涼風がわたってきて、火照った肌がさーっと冷める。風に混じる土と緑の匂いは、無数の小さな生命の匂いだ。自転車を止めて、胸いっぱいに風を吸っていると、前を行く友人が振り返って「ん?」という顔をする。目だけで喋って、さあ行こうと合図した。

フルーツラインの入り口に着いた頃は、もう汗まみれ。「朝とり 新鮮 あかつき」の看板を掲げた直売店の前で息をついていたら、中のおばさんに、「食べてって~!」と声をかけられた。冷たい井戸水で顔を洗わせてもらって、大阪から来ましたというと、好きなだけ食べてと山積みの桃を指差され、わぁ~嬉しいと、かぶりついた。

「あかつき」は、白桃に比べるとやや固め。密実というか、ぎゅっと果肉が詰まってるって感じ。でも果汁たっぷりでとても甘い。お金を取って下さる気配がないので、どうしよ・・と思いながらも、大きな桃をもう一つおかわりした。

沿道の果樹園には、シーズンになると全国から観光バスを連ねてやってくるらしい。福島県は果物王国で、生産量全国2位の桃をはじめ、梨、ぶどう、りんご、さくらんぼが豊富に採れ、果樹園では色々なくだもの狩りを楽しむことができる。ちなみに、リンゴもさくらんぼも全国2位で、桃の一位は山梨、リンゴは青森、さくらんぼは山形。

私たちも桃狩りの予定だったが、ご馳走になった義理もあり、そのお店で持てるだけの桃を買って帰ることにした。詰めてもらった箱には、「放射性物質 不検出」と印刷された小さな紙が入っていた。「不検出」とは、使用する測定器の検出限界値未満という意味で、一般的に玄米は25、野菜・果物は10、水は1ベクレル/kg。

友人によると、果樹園の除染は2011年の冬に行われている。雨に混じって降り注いだ放射性セシウムが樹皮や葉に付着すると、セシウムは樹の成長に必要なカリウムと似ているので、師管が栄養素とみなして吸い取って、果実に転流する。だから、樹皮を高圧洗浄し、放射性セシウムを樹皮から取り除くのが効果的なのだそうだ。

効果は顕著に表れていて、除染をしなかった2011年の桃に含まれていた放射性セシウムは60ベクレル/kgだったが、除染後の12年は30、13年は20で、今年が不検出になったと聞いた。果物の基準値は100ベクレル/kgだから、もう安心だ。こう書くと、ゼロではないといって心配される方もおられるので、もう少し書こう。