お祝い会のこと(その11 女性のエンジニアによるシンポジウム③)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2017.09.05 ]構造デザイン

お祝い会のこと(その11 女性のエンジニアによるシンポジウム③)

シンポジウムは成功だったと思う。3枚のスライドのテーマを①仕事場、②作品、③これからとし、5分間にぎゅっと圧縮するというルールが、パネラーの個性を浮き彫りにした。面白くてよく笑ったが、私は何よりも6人の驚くほどの率直さにずっと心を打たれていた。

構造エンジニアという視点で振り返るのに、出席者の皆さんの言葉を紹介したい。

川口健一先生(第3部のスピーチより要約)
「20世紀は怖い男の先生が、難しい顔をして構造設計をしていた。21世紀になって、子どもが足元でハイハイする職場で女性がする構造設計は、20世紀のそれとはとはまったく違うものなんじゃないかと思う。今日、僕たちは、歴史的な瞬間に立ち会ったのではないだろうか」

和田章先生(翌日のメールから)「構造設計の新しい動きが始まっているように感じます」

倉方俊輔さん(会場からのツイート)「同じ構造デザイナーという世界でも、アクロバティックな冒険というより、より繊細で柔軟な解決が求められる時代に変化した現在、このユーモアに満ちたスピーチにみられるような女性らしさのほうが、構造エンジニアに向いているのでは、と示唆する桝田さん。以上、半分は私の意訳なので、同意する。」

川口先生も和田先生も、やさしい言葉で表現されたが、実は本質を突いていると思う。倉方さんはさすがに言葉の人。短い言葉で瞬時にまとめて発信してくださった。

6人の中で、最も「女性」を意識しないといけない環境で働いていたのは、須賀さんだ。少し前に、科学者の中西順子と上野千鶴子の対談を読んだ。理系の女性研究者が男の職場でサバイバルする3つの法則があるというのだが、その1はニッチ戦略。他の人がやらないマイナーな研究をする。その2は大規模な予算がいらない個人プレーができる研究テーマを選ぶ。その3は男性と競合しない分野に進出する、だった。まさしく須賀さんの取った作戦はこの法則にあてはまる。須賀さんには、あとの懇親会で、ぜひ大学で女子学生に話しを聞かせてほしいというオファーがあったらしい。そんな展開が嬉しい。

構造エンジニアとジェンダーの関係を、まだここでまとめる力が私にはない。それを期待して、ここまで読んでくださった皆さんには申し訳ないと思うが、このような記録を残すのが精一杯だ。

6人のありのままの姿や言葉は、会場にいた女性たちの心の琴線に触れ、それぞれに小さな変化をもたらしたようだ。参加して自分を肯定することができたというような後日談を聴くと、あらためて女性の共感力の大きさを感じ、開催してよかったと思う。

この企画は、失敗したら多くの女性の足を引っ張ることになるので、絶対に失敗できなかった。

「非東京、非男性、非(意匠)建築家でここまでできることを証してくれる最先端、桝田洋子さんの力強さよ」倉方さんが会場からツイートで発信してくださったこの言葉にどれだけ救われたことか。

6人のパネラーの皆さん、司会の金尾さんと北尾さん、ほんとにどうもありがとうございました。