第24回地下発電所 フィルム上映会「ミリキタリの猫」|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所

トーチカ通信

[ 2012.12.27 ]地下発電所

第24回地下発電所 フィルム上映会「ミリキタリの猫」

地下発電所は、毎回ゲストをお招きして、前半は座談会、後半は食事会のようなことをしている。ゲストは日頃、お会いしたいと思っている方に直接交渉をするのだが、スケジュール調整がうまくいかないときは休会にしていた。ある日、そういう場合は、ドキュメンタリ・フィルムの上映会をしてはどうかと考えた。

ドキュメンタリ映画は、大阪のミニシアターで上映されても期間が短いし、東京でしか上映されないものもある。DVDになってもツタヤに置かれないものもある。そこで、トーチカ・ライブラリとしてDVDを少しずつそろえていこうと考えた。参加できない人には、貸し出しすることもできる。

11月の地下発電所はその試みの第1回目だった。上映前に、この映画をより深く理解するために、30分間の予習の時間をとった。そこでは泉原省二さんが、時代背景を知るための年表や、今回のテーマとなる日系人強制収容所の概要、参考文献などを整理したレジュメを準備し、レクチャーをして下さった。

面白かった。社会的なテーマを扱ったものやアート系のフィルムなら地下発電所の趣旨に合う。情報量が多いし、この方法なら世界中からテーマを探してくることができる。

「ミリキタリの猫」は公式HPに詳しいが、これはジミー・ミリキタニという日系アメリカ人画家の言動を撮影した記録映画である。彼は1920年アメリカ合衆国生まれ、2012年10月に92歳で亡くなった。監督のリンダ・ハッテンドーフは、路上生活者のジミーが描く猫の絵を見て、彼と出会う。2001年の9月11日に、貿易センタービルが崩れ落ち、有毒ガスに咳き込むジミーを自宅のアパートに招き入れ、共同生活が始まる。リンダはジミーの社会保障や放棄した市民権を調べる一方、ジミーの語る個人史によって人間性を変革させ、新しいコミュニティを発見していく過程が描かれている。

第二次世界大戦中、アメリカには日系人強制収容所が11ヶ所あった。1942年(22歳)~46年(26歳)まで、ジミーはカリフォルニア州ツール・レイクの収容所に収容される。ジミーの家族は広島の原爆で大半が亡くなっている。意外だったのは、現代のアメリカ人の大半は収容所を知らないということだ。教科書にもほとんど記述がないらしい。8月6日を知らない人も多い。

映画では9.11直後のアメリカの生々しい日常も描かれていた。憎しみと復讐の連鎖。不寛容なアメリカ。差別、戦争、移民、原爆、ホームレス、歴史認識、原爆・・・どれも現代の日本の問題に関わっている。にわかに右翼化する日本。今こそこのような映画を見て歴史を確認しておきたい。私は今、この映画の参考図書として紹介してもらった『菊と刀』を今さらだけど読み始めた。フィルム上映会は続けてみようと思う。

今年、地下発電所にお越し頂いたみなさん、どうもありがとうございました。ご一緒できて楽しかったです。来年も1月から始めます。興味とご都合があえば、ぜひお越しください。お待ちしています。