[ 2015.08.15 ]本・映画・演劇・美術・音楽
今井書店のことを書こう。創業は1872年(明治5年)。ネットで調べると、創業者の今井兼文は長崎で医学を学び、米子で儒医となって、後に今井郁文堂を開く。それが今井書店の始まりとある。
明治5年がどんな年か調べると、新橋-横浜間に鉄道が開通し、東京日日新聞、報知新聞が創刊され、学制がひかれて小学校が全国にできた年である。年表を見ていると、創業者がこれから市民に必要なのは、「本」だと考えた時代の空気がわかる。
ところで、今回リニューアルした店舗は「本の学校 今井ブックセンター」という名前だ。この「本の学校」は何だろうと調べると、創業者の「ドイツの書籍業学校に学ぶべき」という遺志を継いで設立され、2012年にNPO法人になったと書かれている。
では「ドイツの書籍業学校」とはなんだろう。ドイツの教育制度や社会制度を知らないと理解しにくいが、ドイツでは、国が認定する350の職業に正規に就くためには資格が必要で、資格習得のために、2~3年間の職業教育システムが用意されている。書籍業学校とは書籍業に必要な資格を習得するための職業教育学校のことだ。
ブックセンターの2階のセミナー室では、出版界や図書館界のあるべき姿を問うシンポジウムや、出版業界人・書店人の研修講座が開催されている。「本の学校」は平たくいうと、書店員を目指して全国から集まった実習生の研修ができる書店といえばいいかもしれない。
創業当時をもう少し調べると、明治17年には、書店の隣に活版印刷所を作り、本を販売するだけでなく、出版業へと事業を広げている。そういえば活版印刷を発明したグーテンベルクはドイツ人だった。
グループ会社の今井印刷は、創業以来、山陰の情報発信と文化貢献を行ってきたが、130周年事業で「本の工房」として自費出版のミニ展示場を開設した。工場見学や本づくりに関するワークショップも予定されている。
とにかく、今井書店、面白いです。ぜひ訪れてください。
http://www1.imaibooks.co.jp/book/