[ 2014.03.11 ]原発・福島・東北
去年の3月10日は、いろんな偶然が重なって、導かれるように水俣に行った。帰ってきてしばらくしたとき、水俣に一緒に行った友人が、この本を教えてくれた。この週末に読み直したら、新たな気づきがあったというので、私も今夜読み直した。震災後にどんな小説を書くか。それは作家にとって、文学の力が試される恐ろしいテーマだ。「文学」を「言葉」に置き換えてもいい。これは文学にしかできないことがあると思わせてくれる小説である。
一人ひとりの想像のなかでだけオンエアされる『想像ラジオ』。向こうの世界から届けられるDJの声は、想像力を働かせ、耳を澄ます人にしか届かない。読み進むうちに、呼吸が深く静かになり、遠くにあって届かない、簡単にアクセスをゆるされない、はるかなものに、意識が向かい始める。それは祈りではなく、はるかなものへの感応である。死者とともにこの国を作り直していくことを思い出させてくれるこの本を、もしまだだったら、手に取ってみてください。
2011年の3月の終わりに、私はある人にこのメールを送った。
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音楽つながりで、もう一つ思い出しました。坂本龍一の『AMORE』です。
♪おはよう
元気か
君は誰だ?
そしてどこにいるんだ?
村上龍が、これはある兵士の内部から外部、外部から内部への境界線上に誕生するラヴ・ソングだと書いていました。「他者の中にすべてがあり、人がなすべきことは他者からの呼びかけに応えることだけだ」というあなたの言葉は、このイメージと少し重なります。 他者からの呼びかけに応えること、小さな声を聞き逃さないためには、心静かにしてないとね。
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心に寄り添うということは、まず耳を澄まして、声を聞くこと。想像力を働かせることだった。
想像力の限界と、現実に対する無知は、不寛容と無責任を生み、人を傷つける。そんな失敗はもうしたくない。