JSCA関西サロン 女性のエンジニアの集い(その2)|トーチカ通信|桃李舎一級建築事務所|大阪の建築構造設計事務所

トーチカ通信

[ 2024.08.10 ]構造デザイン

JSCA関西サロン 女性のエンジニアの集い(その2)

さて当日。おつまみの買い物をして3時15分に会場に着くと、サポート役として池内さんが待機して下さっていた。机の配置を相談すると、「島状にします?」とおっしゃる。一緒に動かしながら「斜めにしませんか」というと「はい、やってみましょう」と言われてサッと動かすと、一瞬でバッチリ決まった。「電球を吊るしたいです」と言うと、「私がやります」と言われたが、私も反対側から吊るし始めた。ところが池内さんは私の倍のスピードで手際がいい。「高さが隣と合わなくて・・」と焦ると、「それも味ですよ」とおっしゃる。見ると池内さんの電球の高さもまちまちだった。

私はそこで、力が抜けて、笑ってしまった。一気に親近感が湧いた。サバサバしていて大らかで機転が利いて、判断が早い。仕事もできる人なんだろうなぁ。こんな女の人たちが今からやってくると思うとワクワクした。

事務局の石原さんは、冷蔵庫の中とおつりの小銭の説明をして、「桝田さんは店長だからカウンターはお任せするね」と言われた。JSCAのイベントは、池内さんや石原さんのような舞台裏を支えて下さる有志のボランティアによって成立しているのだ。一息ついた私は、薄めのバーボンの水割りを飲みながら、お客さんを待った。

開店直後の様子。左の最前列が池内さん。一番奥が私。 ぶら下がってる電球は第1回目に100円ショップで購入されたもの。

 

うちのスタッフの吉村、宮本を皮切りに、ぽつぽつとお客さんがやってきた。荒木さんが、「東京からも来ましたよ~!」と、学生時代にインターンシップで桃李舎に来ていた本田さんを連れて来てくれた。二人は東京のアトリエ事務所の元同僚だ。これだけのために東京から来てくれたなんて、感動!荒木さんは4回生の学生を2人連れてきた。私が誘った別の大学の4回生とは、すぐに打ち解けて話し始めた。

皆さん、差し入れをして下さった。女同志の阿吽の呼吸というか、かぶらない。甘いものから辛いもの。軽めのものから、ピザなどのしっかり系まで。ワイン、日本酒、ビールとさまざまに。須賀さんは仕事を終えて18時からの参加だったが、お腹がすく頃だからとデパ地下でお惣菜を買ってきて下さった。さすがのお心遣いである。

18時になったので、あらかじめアナウンスしておいた1分間の自己紹介をしてもらった。名前と所属、出身地、今の仕事上のテーマ、趣味や余暇の過ごし方など。私は遅れて来られたお客さんの対応で席を外し、全部は聞けていないが、みなさんそれぞれに違うテーマがあり、趣味も多様だった。年齢は20代から60代まで。所属はゼネコン、総合設計事務所、構造専業事務所、メーカー、調査会社、アトリエ系構造事務所と、業界を横断する豊かな顔ぶれだった。みなさん、現役のエンジニアである。

仕事のテーマについては、「職業人生の終盤、まだ使ったことのない材料や構造システムに取り組みたい(これは私)」「60歳になっても70歳になっても働くためには、どうすればいいだろうか」「就職して、大学で勉強したこととは違う専門の配属になったが、それもやってみれば面白かった」「新しい構造システムに挑戦したい」「CLTの設計は、マイダスの入力が大変」「ハードなアトリエ事務所から独立した。これからはワークライフバランス重視で、必要以上に働かないようにしたい」

趣味や余暇の過ごし方は、料理をしながら夫と飲むこととベランダ菜園(これは私)、クライミング、ゴスペル、ドラム、本気のダイビング、今後やってみたいこととしてサックス。子供のバスケの練習に、バッシュを履いて参加して玉ひろい。スチレンボードで子供が遊ぶ武器を作ること。子供が小さいので、インスタで時短料理を見つけて作ること。手芸が趣味だけど、子供のものばかり作ってるとか。

若い人の中には、ものすごくハードに働いてきたので、結婚を機に人間らしい生活も楽しみたくなったという人もいる。アトリエ系の事務所には軌道を逸した働き方をするところが多い。それがいいとは思わないが、修行の身だからと自分を納得させながら無理を重ねていく。「独立する前はワーカホリックだった」という発言は、私自身に同じような時代があったから胸に刺さった。昭和世代はアトリエ系に限らず、どの組織でも同じだったと思う。中堅の人たちは、そういう時期を乗り越えて、ちょうどいいバランスを見つけておられていると感じた。一方で、中間管理職に着かれてからは、違う苦労もあろうことは聞かなくても想像はつく。

自己紹介のあとは、席を移動しながら、フリートーク。子供が待っているからと、泣く泣く途中退席されたのは、阪田さん。4時スタートにしておいてよかった。

私は訊かれるまま、仕事の話や、事務所の運営のコツなどを話した。話すうちに、新しい勉強会のテーマが見つかり、やりましょう!と盛り上がっていた。全国組織の会社では、女性でも転勤が多いことに驚かされた。40代以上の人は比較的同じ会社で長く働いているようだったが、30そこそこの転職組は、まだ自分探しが続いているのかな。学生はそんな先輩たちの話を、瞳に宿る野心を隠そうともせず、食いつくように聞いていた。

閉店の8時になった。もったいないから、おかず類は完食して、お菓子は小さな袋につめて持って帰ってもらうようにお願いした。参加者は29人。予想を超える人数だった。4時間はあっという間で、名残惜しかった。

最期に円陣を組み、「明日から、また違う場所にバラバラになるけど、しんどいことがあったら、今日会った人たちの顔を思い浮かべてください。頑張ってるかな・・と思うと、きっと乗り越えられると思います。みんなで一緒にがんばっていきましょう!」と挨拶し、拍手でBAR MASUDAを閉めた。